9話③編

ミュー「デザイナーさんには悪いけど、あのデザインはワタシには無理」

アディ「まぁ、ちんちくりんだからな」

ミュー「そういう話じゃないよ!身動き出来ないって言ってんの!」

アディ「お前はいちいち文句が多い」

ミュー「何でワタシが悪いみたいになってんの???」



アディ「ソファの上に立ったときは靴を脱いでるんだな」

ミュー「お城の豪華なソファに土足で立ち上がれるほど、メンタルは強靱じゃない」

アディ「俺の頭は叩くのにか?」

ミュー「アンタにツッコミを入れるのに、何か覚悟っているっけ?」

アディ「……お前、そういうとこだぞ」

ミュー「何が?」



ミュー「そもそも、このライナーさんの表情が全てを物語ってるじゃないか」

アディ「詳しく聞いても目を逸らすだけだったな、あいつ」

ミュー「ド素人のワタシに多くを求める方が間違ってる」

アディ「そこで開き直るからお前なんだろうな」

ミュー「うっさい。ハイスペックなお前と比べるな」



ミュー「デザイナーさんの顔」

アディ「どうかしたか?」

ミュー「ここだと『そんなの有り得ない』みたいな顔してるのに……」

アディ「……」

ミュー「脆く儚く崩れ去るワタシの期待……」

アディ「ドレスが嫌だと言ったのはお前だろ」

ミュー「違う、あのデザインが無理って話!」



アディ「む?」

ミュー「デザイナーさんが出してきたドレスは、コルセットしたり、パニエ付けたり、ヒールのくそ高い靴を履いて着るようなのだから、身動きでいないって意味!」

アディ「新年会のドレスだぞ。そういうのしか無いに決まってるだろ」

ミュー「選択肢が少なすぎる!!!」



ミュー「ペアルックだって聞いた瞬間、デザイナーさんがワタシを裏切った……。さっきまでドレス派だったのに……」

アディ「創作意欲を刺激したんじゃないか?」

ミュー「アンタが余計なことを言わなけりゃ、穏便に衣装の調整が出来たと思うんだけどなぁ?」

アディ「顔が怖いぞ」

ミュー「煩い」



ミュー「真面目そうな顔で真面目そうな内容を話してるけど、大体こういうときは面白がってるんだ、アンタは」

アディ「失礼な奴だな。俺はいつでも大真面目だぞ」

ミュー「大真面目にボケをかますのを止めろと言ってるんだよ!」

アディ「別にボケてないぞ。本心だ」

ミュー「ワタシで遊ぶな!」



ミュー「ライナーさんは聞かなかったフリしてるし、エーレンフリートは案の定何かオーラ出てるしさぁ……。でもこれ、ワタシは悪くないと思うんだ」

アディ「ん?」

ミュー「ワタシにツッコミを入れさせてるアンタが悪いんだよ、絶対!」

アディ「盛大な責任転嫁だな」

ミュー「事実の指摘だよ!」



ミュー「大体さぁ、無駄飯食らい脱却を目指してお仕事を頑張っただけなんだよ、ワタシは」

アディ「別にお前を無駄飯食らいとは思っとらんが?」

ミュー「嘘だぁ」

アディ「……お前は本当に、そういうところがな」

ミュー「何だよ」

アディ「まぁ、お前らしいが」

ミュー「何が???」


ミュー「ド素人のワタシに鬼過ぎる」

アディ「まだ時間がある段階で準備をさせたんだ。マシだろ」

ミュー「ワタシにとってはギリギリだったよ!」

アディ「やれば出来る」

ミュー「だから、アンタは自分のスペックを基準に考えるのを止めろ!」

アディ「ん?」

ミュー「この無自覚ハイスペックー!」



アディ「まぁ、女官長がいるから大丈夫だろ」

ミュー「飴と鞭のスパルタマダムなんですけど」

アディ「頑張れ?」

ミュー「他人事よくない!」

アディ「他人事だ」

ミュー「この野郎!」


以下、口論が続くので割愛!

(終)

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