06 狩名更

 救急車の音。

 担架。運ばれていく。


 一瞬だけ、姿が見える。血みどろ。公園を突っ切っていったので、おそらく公園を出てすぐの横断歩道で事故があったのだろう。


 ちらっと見えた姿。ドナー検査会場の、彼女だったような気がする。


 それを見たとき。


 とても、残酷な気分になった。


「おまえの身体なんか、いらない」


 たとえ、どんなに馬が合っても。雰囲気が同じでも。彼女の身体はいらない。


「誰にも受け入れられずに、死ねよ」


 呟いて、その言葉のあまりのひどさに、ひとり、わらった。


「誰にも受け入れられずに死ぬのは。俺のほうだ」


 何やってるんだろう、俺は。純粋な好意を向けてくれた相手にひどいことを言って。自分の恋人の最期の願いすら叶えられなくて。


 俺は。


 だめなやつだと、あらためて思う。


 死んだほうがいい。

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