第15話法務大臣と摂政①
法務大臣アーサーと摂政オリバーの出会いの話です。アーサー視点で話が進んでいきます。完全なBLです。
太陽は沈み、月明かりと火の光のみを頼りにペンを動かす。
本来仕事は公務時間内に終わらしたかったのであるが本日予想外の事が起き仕事が思うようにはかどらず自室まで持ち帰ってしまった。
「ルカの件聞きましたか?摂政どの」
目の前ソファーに足をあげ転がりながらだるそうに言葉を放つのは法務大臣アーサーである。母譲りのきれいな金髪を伸ばし後ろで束ねている。青い瞳は見えないくらいいつも細めている。
相変わらず美しい男だと思う。
「ルカの報告は宰相のクリスティーナから昼間の公務時間に外務室で受けている」
私の皮肉を気にせず、アーサーは立ち上がり机の側までくると私の目の前にあった書類を持ちひらひらと遊ぶよう持ってからに端におく。
「オリバー寂しいの? ルカが自分の意識を伝えられたんだよ?」
自分の心が見透かされ何も言えなくなり、書く対象がなくなったペンを机に音を立てておく。
確か寂しい。人見知りが強いルカは人付き合いが苦手で様々なところで誤解をされていた。しかし、生まれた瞬間から一緒にいる叔父である私には懐いてくれた。
いつも何をするのも全て私に相談してくれた。
「相談がなかった。」
ボソリとつぶやいた私の言葉にアーサーは大笑いする。
笑いながら私の頭を乱暴になぜた。そして、頭を抱えるように抱きしめてくれた。それに素直に従い、彼の胸に額をつける。
「ルカもいつまでも子どもじゃないよ。自分で考えて行動する時期だと思うな。さっさと甥ばなれしないと。その為に家庭教師の件も手を出さなかったでしょ」
アーサーは私の頭を両手でつかみ、胸から離すと自分の顔近付ける。
彼の美しい顔が目の前にきて胸が高鳴った。鼻と鼻が触れるか触れないかの位置でまでくると普段はあまり開かれない青い目に見つめられた。
心臓が壊れると思うくらい早く動く。
「あんまり甥っ子ばかりだと、拗ねちゃうよ。」
ワザとらしく音を立てて頬に口付けをした。
触れられた場所が熱を持つのを感じた。彼から漏れる色気には私は抗うことはない。無言で彼に従う。
「お仕事終わりでしょう。その為に私室に移動して僕が手伝ってあげたんだから。」
今まで山の様にあった書類が全て片付けられている。さっきアーサーが手にした書類で最後だ。
どうも甥の事が絡むと仕事がうまく行かずアーサーの手をかりてしまう。頼りすぎなのはわかっているのかだが……。
「オリバー」
耳元で甘く囁かれると頭がはたらかなくなる。いつも、笑顔で飄々としているがこういう時だけ表情をかえ、甘い雰囲気をつくるのだ。
*****
僕は椅子に座るオリバーの手を引きベッドまでエスコートした。
真っ赤になり俯きながらも僕の手を握るオリバーはとても可愛い。結婚して長くなるが彼の可愛いさは、増していくばかりである。
はじめて会った彼はまだ幼さが残る少年であった。
王族である僕は16歳の成人になると盛大な誕生祭が行われそれ以降公務を行わなくてはならない。その特権として、国外へ行けるようになるのだ。
義務と権利というは常に一体だ。
僕は隣国パニーア共和国に行きたかった。
昔の争いから公的交流以外は関わりがないということだが、摂政である母や女王である伯母はたびたび出かけているということを知っている。
我が国とは違う文化に是非とも触れてみたい。
今日は、伯母と母について隣国へ行く。公的なものではなく友人に会いにいくだけであるため同行を許可された。
隣国といっても馬車で数時間掛かる。馬車では母と二人きりの時間を久しぶりに過ごした。
背筋を伸ばし騎士の制服を着た母が足の間に剣を持ち僕の目の前座る。その姿は摂政ではなく騎士そのものである。しかし騎士のように男くさくなく、優しい笑顔を振りまいているので格好いいと城の侍女や民に人気がある。
元々母は摂政ではなく騎士になりたかったようである。しかし、第二子として生まれた以上摂政にならないという道はない。
だが、騎士なりたいという思いを諦めることはせず、母は次期摂政として業務を行いながら騎士としての訓練および試験を受け副隊長まで上りつめた。そこで伯母が王位継承したので騎士を辞め摂政となった。
いまだに騎士の制服を着ているのは楽だからと言うが本当は未練があるのかもしれない。
「母が騎士の姿なのは騎士に未練があるのですか?」
「ドレスは動きづらいからね。」
優しく微笑み相変わらず自由な発言をする母。思い起こせば母のドレス姿を見たことがない。
「そういえばフィリップ第一王子は一緒に向かわないのですか?」
第一王子のフィリップも僕と同い年であり、半年前に誕生祭を行った。希望すれば一緒に同行することもできたと思う。彼こそ他国を見て感じた方がいいと思う。
「フィリップ? 面倒くさい。」
母は目をつぶり眉間にシワを寄せた。
面倒くさい理由は想像できたのでそれ以上聞かなかった。母も話したくないのであろう。
第一王子フィリップは色々面倒くさい。次期国王であるから言われたことは真面目に学習し、大人に指示従ういい子だ。
伯母譲りのきれいな顔している。そのため自分が動かなくとも全て事が運んでいくのだ。そのため自ら動いて学ぶという事がない。
だからこそ、僕は連れてくるべきだと思うが連れてくるまでが面倒くさいのかも知れない。
我が国の将来が心配になった。
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