第12話家庭教師

 王族は4歳になると家庭教師がつき、本格的な学習が始まる。貴族も大抵4歳から始めるが王族ほど厳しい規定はない。


 私も4歳から各分野別に数名の家庭教師がつけられた。王族の家庭教師は上位貴族の中から勉学が優秀な者がつく事も多かった。


 本に興味がなかった私は家庭教師から教わる事が新しい知識であり面白かった。そのためもっと学びたいと思い興味がなかった本や家庭教師が用意して教材を読み、すぐに理解した。


 そうしたら、途端に授業が詰まらなくなった。家庭教師は教材の内容を話すだけだ。だから、教材を見るのをやめた。その方が面白い。


  受けなければならない授業であるならば面白い方が断然よい。


 ある日、家庭教師が習っていない所を質問してきた。当然分からず答えられなくて黙っていると、ニヤニヤとした笑いを浮かべた。


「第一王子殿下は、どんな質問でも答える事ができましたよ」


 以前、兄の家庭教師をしていた者だった。

 あれもこれも知らないのかと言われて授業が終わった。だから、次の授業は教材を全て確認してから受け質問に全て回答した。


「これくらい答えられて当たり前です」


 今度は、いかに兄が素晴らしく私がいかに出来ないかを話された。しばらくすると授業が嫌になった。最初は皮肉を言う家庭教師が1人であったがどんどん増えていった。我慢ができず、ある日授業の時間に庭を散歩した。


 そしたら、嫌みばかり言っていた家庭教師がおいかけてくる。訳の分からない嫌みではなく自分自身が犯した罪に怒っている事が面白かった。


 自分の行動で相手が反応するのが楽しくてたまらなかった。いつも規則にうるさい摂政も何も言わなかったので行動はどんどんエスカレートしていった。


 授業に出席しないの当たり前、家庭教師に捕まり授業に出なくてはいけなくなった時は寝ていた。


 それに呆れたのだろう。


 しばらくすると家庭教師は私を追いかけなくなった。しかし仕事だから、私が居ても居なくても部屋には来て授業時間が終わると居なくなる。本当は私の家庭教師制度を廃止したかったけど、そんな事言い出せず時が過ぎていった。


 前世の記憶が戻ってからこの数ヶ月ルイと剣術の訓練する時以外図書室にこもっていた。そこで国の法律はだいたい把握し、余りそれが機能してないことも理解した。

 何か問題があれば身分の低い者の責任となり貴族や王族を訴えることは不可能というなシステムになっている。判例が載っている書物があったが、例外なく身分の高い者に有利な判決が下されている。


 私はこの国の事をよく知らない。漫画の知識はあっても国の情勢や法律などはほとんどのっていなかった。

 主人公が反乱軍にはいり革命を起こすので法律もなにもないのだろう。


 ハリー・ナイトの出身である貧困地域については一言程度しか記載がない。そこへ行って自分の目で確認したいと思ったが許可がおりる訳がない。だから家庭教師から学べるなら頭をいくらでも下げるつもりだった。


「珍しいですね」


 学習の時間、椅子に座っていると家庭教師が目を大きくして見てくる。


「聞きたい事があります。今までの失礼な態度申し訳ありません」


 謝罪と目的を伝え資料を見せながら図書で学び理解出来なかった事を聞く。資料を見て、家庭教師はあからさまに不愉快な顔した。そして、しばらく沈黙が続いた後、家庭教師は資料を閉じた。


「必要ありません」


 きっぱりとそう言う、家庭教師の目は冷たく軽蔑しているようである。


「必要ないはず、ありませんよね。貧困地域もわが国です。しかし、詳しい資料がなく今回持ってきたものも存在があるしか記載されていません」


「あそこはゴミです。王族が気にする必要はありませんよ」


 貧困地域の事が載っている資料を汚れたような物にテーブルに置いた。


「ゴミとはどういう事ですか?行ったことがあるのですか?」


「有り得ないです」


 その言葉に眉をひそめ、苦虫を噛み潰したように言い放った。全身で不愉快を表している。

 もう、何を聞いても無駄だと感じた。

 彼は家庭教師をしているが貴族なのだ。


 私は礼を言うと部屋をでた。そして、その足で宰相のもとへ向かった。城の内部は完璧に覚えたので宰相がいる部屋までは迷うことなく到着した。


 宰相は、第二王妃、法務大臣と共に仕事をしている。第二王妃をトップに宰相、法務大臣は主に国内の政を担う。


 第二王妃と言っても他国にように王の妻としての仕事だけではない。国を運営する側であり毎日多忙な日々を送っている。そのため王位継承者の婚約者選別は毎回大変であった。

 国務室の前に来ると姿勢を正す。国務室前の衛兵が私に丁寧に挨拶をすると、室内に声をかけた。

 それから衛兵はすぐに扉をあけ中へ促された。



「失礼致します。ルカ・アレクサンダー・フィリップです」

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