夜半のひかり
汐野ちより
第1話
実は私は、
だけどきっと、彼は私のことなど知らなかったはずだ。
吉永蓮は、となりのクラスの一番後ろの席に座っていた。
何かあればよく通る声で大きく笑い、周りには男女問わずクラスメートが集まる。となりの教室の私にもそんな印象を与えるくらい、彼は目立つ男子生徒だった。
私と彼の世界は交わらないはずだった。
私たちが関わりを持つことはないという事実が、私を蝕んでいく。何度も痛みが私を襲った。保健室のベッドの上、羨望と嫉妬の狭間で不安定に揺らいでいた。
自分から存在を遠ざけておきながら、諦め切ることができなかった。
彼のように周りを惹きつける魅力は、私にはない。彼と話してみたいだとか、そんな望みももちろんない。ただ輝いている彼を物陰から見ることだけでも、精一杯だった。
それなのに、高校初年度も折り返しに差し掛かった頃、唐突に世界は覆った。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録(無料)
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます