夜半のひかり

汐野ちより

第1話

 実は私は、吉永蓮よしながれんを知っていた。

 だけどきっと、彼は私のことなど知らなかったはずだ。

 



 吉永蓮は、となりのクラスの一番後ろの席に座っていた。

 何かあればよく通る声で大きく笑い、周りには男女問わずクラスメートが集まる。となりの教室の私にもそんな印象を与えるくらい、彼は目立つ男子生徒だった。



 私と彼の世界は交わらないはずだった。


 私たちが関わりを持つことはないという事実が、私を蝕んでいく。何度も痛みが私を襲った。保健室のベッドの上、羨望と嫉妬の狭間で不安定に揺らいでいた。

 自分から存在を遠ざけておきながら、諦め切ることができなかった。



 彼のように周りを惹きつける魅力は、私にはない。彼と話してみたいだとか、そんな望みももちろんない。ただ輝いている彼を物陰から見ることだけでも、精一杯だった。



 それなのに、高校初年度も折り返しに差し掛かった頃、唐突に世界は覆った。

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