第四章 ~『グレートタイガーとの闘い』~
アリスはグレートタイガーと向き合う。ガイコツ将軍のような人型の魔物とは違う。四足歩行の脅威を前にして、頭の中で策を練る。
「ジェシカさんを守るためにも無力化しないとですね」
グレートタイガーのアリスへの敵意を折るだけでは、弱っているジェシカを襲う危険が残る。無力化は必要だ。
だがグレートタイガーは闘いを強いられているだけであり、一種の被害者でもある。目潰しや金的による無力化は本意ではない。後遺症を残さない一撃で、意識を奪う方法を考える。
「策を思いつきました。少し卑怯ですが、私が餌になることにしましょう」
グレートタイガーの凶暴さは調教の成果もあるが、食事を満足に与えられていないのも要因としては大きい。空腹を利用する手を思いつく。
「まずは攪乱しましょうか」
アリスは闘気を足に集中させると、グレートタイガーの周囲を巡る。残像が残るほどの高速移動は、目で追うことができないほどに速い。
しかしグレートタイガーには野生動物の勘があった。超スピードのアリスに飛び掛かると、肩に牙を突き立てる。血肉を貪ろうと、肉を噛み締めるが、口の中に味が広がらない。さらにアリスの肉体が魔力の霧となって消え始めたのだ。
魔法で生み出した分身だと気づいた時にはもう遅い。本物のアリスがグレートタイガーの背後から近寄ると、首筋に手刀を落とす。その一撃はグレートタイガーの意識を奪うのに十分な威力が込められていた。
「私の勝ちですね」
観客たちの顔から嘲笑が消える。グレートタイガーを倒したアリスに、ジェシカが駆け寄る。
「アリス、随分と強くなったのね」
「先生に指導して頂きましたから。それにジェシカさんは大切な友達です。負けるわけにはいきませんから」
「アリス……っ……ありがとう……」
ニコラを裏切り、たくさんの敵を作って来たジェシカにとって、アリスの優しさが心に染みた。彼女の目尻からは感謝の涙が零れ落ちるのだった。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます