卑怯者だと勇者パーティを追放されたので働くことを止めました【書籍化】【コミカライズ】
上下左右
プロローグ ~『勇者パーティを追放されました』~
注意:
書籍版とウェブ版は内容が異なります
マンガUPのコミカライズ版から入られた方は、是非ダッシュエックス文庫より発売の書籍版をご購入いただけると嬉しいです
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「ニコラ、お前を俺たちのパーティから追放する」
「え?」
突然の追放宣言にニコラは絶句する。二年前、彼は魔王を倒すべく結成された勇者パーティの一員として選ばれた。働くことが何よりも嫌いな彼は、当初その誘いを拒絶したが、あまりに熱心な誘いと、武闘家として修行の一環になるのではという期待から、とうとう首を縦に振った。
それから仲間と共に魔人や魔物と戦い、苦難を乗り越えてきた。そして魔王まで残りわずかという局面で、突然リーダーの勇者から追放を宣言されたのだ。受け入れられるはずもない。
「納得できるはず――」
「勇者様の言うとおりですわ」
反論しようとしたニコラを許さないと、女剣士が獣でも見るような視線を彼に向けながら、腰に提げた剣を抜く。
「ど、どうした、いったい。俺たち仲間のはずだろ」
「お前のような卑怯者が、俺たち勇者の仲間なはずがないだろう。今までは便利な駒として使ってやったが、お前の悪評のせいで、勇者の金看板に傷が付く」
「そんな勝手な――」
「勝手なのはどちらですか!」
魔法使いの少女が杖を片手に魔力を集中させる。敵対の意志が全身から溢れ出ていた。
「私はあなたから冒険者としての技術を教わりました。おかげで私は強くなれました」
「だろう! やはり俺は必要な人材だ!」
「しかし今となっては後悔しています。あなたのせいで私は卑怯者の弟子扱いですよ。初対面の人から卑怯者と呼ばれる気持ちが分かりますか!」
「長年連れ添った仲間から卑怯者と呼ばれる気持ちなら分かるぞ」
「あ、あなたのそういうふざけた性格が大嫌いなのです!」
ニコラは反論を口にしようとするも、グッと堪えて我慢する。このまま険悪な関係が続けば、待っているのは戦闘だ。
「だが本当にいいのか。俺が抜けてもこのパーティはやっていけるのか?」
「問題ない、勇者である俺がいるからな。だろ、みんな」
「「はい、勇者様」」
女剣士と魔法使いは勇者に熱い眼差しを向ける。その視線は憧れの仲間に向けるものではなく、恋する乙女が慕う相手に向けるものだった。
「俺はお邪魔ということね」
ニコラは三人の様子を見て、自分がハーレムの中に混ざった不純物なのだと悟る。このままパーティに残留しても良いことはないと判断し、追放を受け入れることに決めた。
「なら俺は去るよ。魔王討伐頑張ってくれ」
「任せておけ。なにせ俺は勇者だ」
勇者は侮辱するように鼻で笑うと、目障りだから消えろと、手を振って追い払う。屈辱を覚えながら、ニコラはおとなしく、その場を後にする。
「背中を見せたな!」
ニコラが背を向けると同時に、勇者は剣を抜き、ニコラに斬りかかる。追撃とばかりに女騎士の斬撃と、魔法使いの炎魔法が彼の身体を痛めつける。傷を負い、地に伏せる彼を見下ろすように、勇者は一言口にした。
「お前の装備は俺たちが有効活用してやるよ。達者で暮らせよ。無職君」
勇者たちはニコラの全財産を奪い取り、魔王討伐の旅を再開した。一人悔しさと痛みで悶えるニコラは「どちらが卑怯者だよ」と言い残して、気絶した。身ぐるみを剥がされた彼に残されたのは、激しい憎悪の感情と、二度と働くものかという意志だけだった。
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