第16話 ジャガイモのピザ?

 それは、唐突に始まった。


「ピザが食べたい」


 今度はピザか。時々あるのよ、妻が突然何かを食べたいと言い出すことが。しかも、小麦アレルギーなのに、パンとかラーメンとか。いや、小麦アレルギーだからこそか? 何しろ、以前は普通に食べていたからね。

 しかし、困った。パンとかラーメンは、辛うじてグルテンフリー食品も売っているけれど、米粉のピザなんて専門店にいかないと……手持ちの食材でなんとかするか。そういえば、昨日「北あかり」(じゃがいも)を買ったっけ。うん、あれで行こう。


「え? ホントに作ってくれるの?」

「自分で頼んでおいてなんだよぅ」

「ありがとー、じゃぁコーヒー入れておくね」


 そそくさとコーヒーを淹れる準備をする妻を横目に、私は調理スタート。


 ジャガイモの皮を剥き、スライサーで細切りにする。ジャガイモ二個でも、細かく切ると結構ボリュームがあるな。細切りにしたジャガイモは、水にさらしてアクを取る。別にアク抜きしなくても良いんだけど、こうすると変色を防げるのよ。アク抜きをしたジャガイモは、ザルにあけて十分に水切りをしておく。

 水切りをしている間に、ボウルに片栗粉と卵を入れてかき混ぜておく。そこに、ジャガイモを少しずつ入れながら絡ませていく。要するに、つなぎだ。絡まったら、塩胡椒を振っておく。食べるときに調整すればいいから、ここでは少し控えめにしておこう。塩分の取り過ぎも気になるし。


 フライパンに少し多めの油を入れ、火にかける。そこにボウルから半分のジャガイモをドーンと投入。高温になってから入れると、ジュージューといい音がするけれど油はねもするので、私は低温から入れる派だ。

 フライパンのジャガイモを、フライ返しで平たく伸ばしていく。これがピザの生地になるわけね。きつね色に焼けたら裏返しにする。周りが多少焦げても気にしない。裏返したら、そこにチーズをかけ、蓋をして少し蒸し焼きに。

 作り置きしているトマトミートソースを鍋に入れ温めながら、味を調える。作り置きソースは、少し味を薄めに作っているのよ。保存のためには味を濃くした方がいいと思うけど、いろんなものに使いたいからね。


 蓋を取ると、ジュワ~という音ともに湯気が立ち上る。表面のチーズも適度に溶けていいかんじ。皿に移してっと……ミートソースをかけて……うん、ジャガイモで作ったピザの完成だ。


「おまたせ~、どうぞ召し上がれ」

「わ~い、いただきまぁす。コーヒーも入っているわ。あれ? あなたの分は?」

「今焼いてる。先に食べてよ、熱いうちに」

「そぉ? じゃ遠慮なく~」


 箸で小さく切り分けたジャガイモピザを、口に運ぶ妻。


「ん、おいしい」


 そかそか。自分の分も早くできないかなー。食べている妻の顔を見ながら、料理ができあがるのを待つのも幸せな時間。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る