第15話 ベーコンキャベツ、卵のせ

 平日、妻は朝食を食べたがらない。時間がないという。なので、切ったキウイフルーツにヨーグルトと蜂蜜を掛けたものをなんとか口にさせる。ちなみに、小麦アレルギーの症状緩和にキウイがいいと聞いたことがあったからだ。


 その代わり、土日休日は、朝からたくさん食べたがる。定番は、冷凍のハッシュドポテトを焼いた奴とか、目玉焼きにボイルしたソーセージね。ただ、今日は私も余裕があるので、もう少し手間を掛けてみたい。


 まず、キャベツを千切りにする。私の年代だと、キャベツの千切り=庖丁人味平だね。キャベツの葉を何枚かむしり取ったあと軽く水洗いしたら、切りやすい大きさにギュギュッと丸めてから切る。ザクザク、ザクザク。何事も慣れだなぁ。千切りにしたキャベツは、ザルにあけておく。ここで水洗いしたくなっちゃうけど、切断面から栄養が出ちゃうので我慢我慢。

 次に、餅を小さなサイコロ状に切っておく。そして、ベーコンを適当な長さに切る。長いと食べにくい。あとは、卵とチーズを冷蔵庫から出して、これで準備完了。


 フライパンを火に掛け、油をしいて、切ったベーコンを並べる。ふたりともベーコンはカリカリな方が好きなので、両面しっかり焼いておく。次に千切りキャベツをベーコンの上に。二人前なので、キャベツの山をふたつ作る感じで。山の上からサイコロ状の餅を載せ、キャベツ山のてっぺんを凹ませる。キャベツ山のカルデラ湖には、そう! 卵を割り入れるのだっ! きちんと凹ませておかないと、卵が雪崩のように崩れてしまうので、少々緊張する。まぁ、崩れても見栄えが悪くなるだけで、味に違いはないのだけれど。

 卵の上から塩胡椒。今日は、バジルソルトなんて小洒落たもんを使って見るか。パラパラパラ。そして最後に、とろけるチーズ。今日はシートになっているやつで、蓋をする感じで、卵の上に載せる。そして、蓋をして後は待つ。

 しかし、シート状のチーズって、子供の頃にはなかったよなぁ。登場しでてきたのって、いつ頃だっけ? パンに載せて焼くときとか便利なんだけど、いちいちプラスチックのシートを剥がす手間が面倒だなぁ。ないとくっついちゃうから仕方ないけど。


 さて、そろそろいいかな? 蓋を開けて確認してみる。蓋を開けた途端、ボワッと蒸気が立ち上る。キャベツはしんなり、チーズもほどよく溶けていて、うん、なかなか良い感じ。卵はどうだろう? 固まってるな。

 半分を皿に盛る。もう半分は、もう少し火を通す。私は半トロくらいが好きなんだけど、妻は半熟も許せない人なので、卵の黄身までしっかり固まるくらいに焼かないと。


 とはいえ、焦げすぎたら台無しなので、適当なところで皿に移す。


「はいよ~」

「あ、なんかできてる~」


 作ってたの、知ってるでしょうが。


「これ、好き。ね、ね、お餅入れてくれた?」

「入れたよ。入れないと暴動起こすでしょ」

「起こさないよぅ。でも、泣くかも」

「いいから、はやく食べれ」


 あぁ、こんな会話、他人が聞いたらウザイとか思うんだろうなぁ。でも、我が家では、ほぼ定番のやりとりだったりする。


「うん、美味しい。ありがとね」

「礼には及ばぬ。ワシはパンも食べるし」

「ずる~い」


 小麦アレルギーの妻は、パンが食べられない。米粉のパンがあれば、彼女にもパンを焼くのだけれど、まぁ、これも定番のやりとりだ。

あぁ、休日だなぁ。

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