第13話 Kiss

あれから一年、私の想いは一方通行のまま、月日だけが過ぎていく。



「そう言えば尋斗、もうずっとこっち(日本)にいるの?それとも向こうに?」


「どうかな?」

「未定なんだね」

「そうだな」





ある日の学校での事。




「ねえ、志須霞、二人の関係って微妙?」

「何が?」

「だって同居してんでしょう?」

「うん、してるよ。でも何もないし関係は普通」

「でも、あんたは好きなんでしょう?」




ギクッ

図星だ。





「まさかっ!」




誤魔化す私。




「嘘ばっか」


「本当だってば!」

「はいはい」





それから数日後 ―――――




「すみません……あの…これ…新谷 尋斗先輩に渡して下さい!」


「えっ?あ、うん、分か……」




私の返事を聞く事なく、女の子は封筒に入ったラブレターと思われるものを渡しては嵐のように走り去った。




「早っ!」




きっと彼女は

渡すのに精一杯だったのだろう?




そこへ偶然に尋斗に現れた。




「何? 何?お前にラブレター?」

「違うし!」

「えっ?」




バンッ


尋斗の胸に叩きつけるように押し当てた。




「あんたにだってば!」

「俺!?」


「そう。一瞬だったから顔は良く分かんなかったけど付き合ってみれば?つー事で返事はしてね?渡されてないって思われたらかなわないんで!」


「いや返事はするし!」


「じゃあ宜しく~、尋斗先輩!」



「………………」





その日の夜 ―――




「どうすんの?」

「うわっ!ノックしろよ!ノック!」

「したよ!」

「してねーだろっ!」

「しましたっ!考え事してたからじゃないの?」


「いや…考え事してても絶対気付くはず。年寄りじゃねーんだから!」

「本当にしたからね!それより、ラブレターの返事絶対してね」


「言われなくてもきちんとするし!相手に悪いだろう」


「じゃあ頼んだから。宜しく~」




私は尋斗のは部屋を出た。





次の日 ――――




~尋斗 side ~



俺はラブレターを渡してきたと思われる女子生徒を呼び出した。



「ごめん…昨日の返事だけど……君とは付き合えない…悪い!」

「…そうですか…分かりました」




そう言うと女の子は去り始め、ふと足を止めた。




「あの…」

「何?」

「もしかして…同居されている人?」

「えっ?」

「彼女が…好き…なんですか?もしくは…付き合っているとか?」


「えっ!?いや彼女は違うよ。全く関係ない。…俺…こっち(日本)に帰って来る前まで付き合っていた彼女がいたから」


「えっ?もしかして遠距離してるんですか?」

「いや…遠距離はしていないよ」

「じゃあ…お互い話し合った上で別れたんですね…」

「…ああ…」

「…そうなんですね…すみません…それじゃ失礼します」




女子生徒は足早に去って行った。





その日の夜 ―――




私は尋斗の部屋をノックする。




「………………」




「尋斗ーー、ご飯だってーー」


「…………」


「尋斗?寝てんの?」


「…………」


「入るよ」





カチャ

尋斗の部屋をドアを開けると、ベッドに横になっている尋斗の姿が飛び込んだ。


ドアに背を向けている為、起きているかは顔が確認取れない。




「尋斗?」




私はベッドにゆっくりと近付いた。




「尋斗?寝て……ないんじゃん!だったら返事してよ!ご飯だって!じゃあ、伝えたから降りて来てね」




私は、そう言うと去り始める。




グイッ

私の手を掴み引き止めた。



ドキッ

驚くのと同時に胸が大きく跳ねる私。




「例の事、聞かねーの?」


と、志須霞に問い掛けながらベッドから起き上がりベッドに座る俺。



「例の事って何?」


私は振り返る事なく返事をする。



「告白の返事気になるんじゃねーの?」

「別に」

「嘘ばっか」

「本当だよ!」



バッ

掴まれた手を振りほどく。




「それとも何!?尋斗が聞いて欲しいの!?告白の返事何て言ったの? って…聞く意味分かんないんだけど!?私には関係ない事じゃん!」




グイッと腕を掴み引き寄せられたかと思ったら



ドサッとベッドに倒れ込む私を押えつけ唇が重なっていた。




「………………」



唇が離れる。



見つめ合う私達。




私の胸はドキドキ加速する中、胸がざわつく。




「俺の事好きなくせに何、意地張ってんだよ!」

「別に意地張ってませんっ!とにかく降りて来て!」




私が押し退ける事なく、尋斗は私から離れた。



私はベッドから降り部屋を出て行き始める。




階段を降りて行く、その途中 ―――



ズルッと、階段を踏み外し足を滑らせた。


ガクッ

階段から転びそうになる私。



「きゃあっ!」




グイッと背後から誰かに抱き止められた。




ドキーーッ


驚く私の両胸には抱き止められた両手が当たっている。




「きゃあああっ!」

「うわぁぁぁっ!」



「スケベっ!私の許可なしに触るなっ!」

「ば、馬鹿っ!わざとじゃねーし!」




ドキッ

背後から聞こえる声の主、尋斗だ。




ドカッ



「……っ…てぇ…」



尋斗の何処かに当たったと思われる。



「あっ!ごめん…大体っ!尋斗が悪いんだからねっ!唇まで奪っといて何なのっ!?」

「…知る…かよ…」



苦痛にかなり痛がっている尋斗。



「…………」



私達は騒ぎながらリビングに行くと親から



『いつからそんな関係になったの?』



と冗談混じりな会話が私達の家で盛り上がったのは言うまでもない。














































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