5分間だけ、世界滅亡の話をしませんか?

池田春哉

5分

「5分間だけ、世界滅亡の話をしませんか?」


 刺すような日光を避けるように俺は公園の木陰のベンチに座り、左手でネクタイを緩めてシャツのボタンを開けながら右手で缶コーヒーを煽っていた。

 そんな俺の隣に、不意に知らない女が座る。

「え、どちら様?」

 尋ねながら改めて女を見る。

 目が合って、彼女はにこりと微笑んだ。やっぱり知らない。

 どこかで会った?

 いやそんなことないよな。てか今どこから来た?

「まあまあお気になさらず」 

 女は飄々と言いながら、持っていた缶ジュースのプルタブを開ける。

「もしも明日世界滅亡するとしたら、あなたは何をしますか?」

 気味が悪い。なんだこいつは。

 しかしそんな気持ちの俺を無視して、彼女は強引に話を続ける。

「ほらほら、時間がありませんよ」

「何の時間だよ」

「5分間だけ、って言ったでしょ?」

 よくわからない女だ。盗人ではなさそうだが。

 一応、自分の隣に置いた鞄があることを手で確かめる。

 ……まあでも別に何でもいいか。もう全部どうでもいい。

 俺にはもう何もないしな。

「何もしねえよ。多分今日みたいに、缶コーヒー飲んでやさぐれるだけだ」

 心の底から適当に答えた。


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