ページ1『新たな人生を』
⦅ステータスカード⦆
【名前】ハプスルーリー
【性別】男【年齢】13歳
【チーム】チームソルビ市
【タイプ】炎
【戦闘タイプ】ヒール
【固有魔法】能力転換、合体
【固有能力】調理
【身分】貴族(星5)
「これが、ほわの名前…...ハプ・スルーリー...…」
新しい名前を見て、穂羽はハプスルーリーとして生きていく決意をする。
そして、その下に書かれている項目を読んでいく。
「男!? 男の子だったの!? 声が高いし、女の子かと...」
「あ、た、り、ま、え、なのですよ! ケプナスずーっとおにちゃーま、おにちゃーまって言ってたはずなのです!」
1文字ごとに謎ポーズをとりながら、ケプナススルーリーこと、新しい穂羽の妹が言葉を発してきた。
「あ、おにちゃーまって、お兄ちゃんって意味だったの? 独特な言い方するんだね」
そう、上の空で返事をしながら、ステータスカードをながめる。
「この、『チーム』ってなんの事?」
「魔術師がいーっぱいの集まるところなのです」
「魔術師?」
聞きなれない単語に、穂羽は耳を傾ける。魔術師、魔法使い。今まで居た世界では、本やテレビでしか聞かないような、ファンタジックな単語。
しかし、此処は異世界。これがもしよくある異世界転生のようなものなら、確かに「魔術師」というものがあってもおかしくない。
「ま、まままままままさかまさかぁ! おにちゃーま、魔術師のことも忘れてしまってしまったのですかぁ?!」
あれっ。もしかして、すっごく常識的なことだったのかも。
ハプの疑問を耳にし、文の組み合わせ方がおかしくなるほど驚くケプナスを見て、穂羽はそう思う。
「え、えっと、ごめんね? ほわ、本当に記憶喪失になっちゃったみたいだから、チームと魔術師について、分かりやすく説明してくれるかな?」
もしこの世界において魔術師がとても基本的なことなのであれば、知っておいて損は無い。
ケプナスは1度驚いたように目をぱちくりさせたが、すぐにニコッと笑い、説明を始めた。
「まず魔術師から説明! なのですっ!」
飛び跳ねながら一回転して、ケプナスはそう言った。
「魔術師って言うのは、まじゅつ、を使うのです。それぞれ色々違うのが使えて、まじゅつで『わーやー!』したり『そーれ〜!』するのです! よし、次はチームの説明なのです。チームは、」
「ま、待ってケプナス!」
次の説明に移ろうとしたケプナスを、慌ててハプは引き止める。
こんな分かりにくい説明聞いて分かるか!
もっと分かりやすく説明しろ!
そう思ったからだ。
「あのね、どういう意味? 言っている意味がホントのホントのホントに分からない」
「ひ、酷いのですね?! ケプナスが心を込めて、しーーっかり説明したと言うのに! 仕方ない、この天!才!的!ケプナスがもー1度説明してあげるのです!」
打ちのめされたように後ろに大きく一歩下がって、手をぐるぐる回した後、今度は前に進みながら胸に手を当てて自信満々に説明を始めるケプナス。
どうせ聞いても分からない、そんなことを思いながらも、ハプは一応聞いておくことにする。
「魔術師は、魔法が使えて、魔法で色々できるのです。それで、その魔術師を住んでるとこでわけわけしたのがチームなのです。」
魔法が使える人たちを集めた団体...よく見る、ちょっとしたギルドのようなものか。
「なるほど、なんとなーくわかったかな? じゃあ、ほわはその『チームソルビ市』って言うチームなんだね?」
「そうなのです。ここはソルビ市だから、『チームソルビ市』なのです。そのまますぎて、びっくりするのですよね? 」
確かにそう。しかし、新たな情報が手に入った。今ハプスルーリーがいる場所は、「ソルビ市」という場所だ。
「えっと、そのソルビ市は、どこの国にあるの?」
異世界とはいえ、自分の居場所くらいは把握しておいた方が今後の役に立つ。それくらいなら、穂羽にだって分かる。
「ソルビ市は、ファスカナ州にあるのです。そのファスカナ州って言うとこに、『ツム国』があるのです。その中は3つの市に別れてるのですが、そのひとつがぁ! ここ! ソルビ市なのですなのです!」
ファスカナ州、ツム国.…..一見、元いた地球と同じような地名に聞こえるが...…耳にしたことがない。
穂羽は、ずっと家でいた為、本などはよく読んでいた。
しかし、見たことも聞いたことも無い。
━━━━やはりここは、異世界なんだ
「そっか、何となく理解出来たかも。ファスカナ州ツム国の、ソルビ市だね?」
「そーなのですぅ! 理解がはやはやなのです! すばらしくてすごーいのです! えらいえらいなのですっ!」
クルクル回り、ジャンプしながら手をバタつかせ、ケプナスはそう言った。
「ごめんね、まだまだ分からないことがたくさんだけど。この、「星5」ってなんなの?」
その他は、ゲームをしたり本を読んだりしていた穂羽には何となくわかった。
しかし、貴族の隣に( )で書かれている『星5』の意味が分からなかった。
「それなのですぅ? それはそれはそれはなのですね、『貴族ランク』というものなのです。『みぶんさ』って言うやつがあって、平民、貴族、王族がいるのですけど、それを星の数で表すのです。」
そう言って、ケプナスはそこに落ちていた棒を拾って、まるで授業のように壁を黒板に見立てて話し始めた。
「平民は星無し、王族は星6。貴族は、いえがら、によって星1~星5に振り分けられるのです。スルーリー家は、星5なので、貴族の中では上の方なのですよ、すごい、すごい、すごすごなのです!」
棒を放り投げてキャッチして、クルクル回しながら自慢げに説明するケプナス。
「なるほど、わかった。ほわの名前はハプスルーリー。13歳の男の子。ツム国ソルビ市にあるチームソルビ市に所属している魔術師で、貴族の中で一番位の高い星5貴族」
斜め上を見ながら、ハプは手にした情報を1からおさらいする。
急に異世界転生し、訳が分からず暗闇の中だったハプ。しかし今は、ケプナスのおかげで少しずつ光が見えてくる。
「せっかく与えられた新たな人生を歩む機会だもん、しっかり満喫しなきゃね。」
「あらたな...なのです?」
「うんう、なんでもないよ。ありがとうケプナス、ケプナスがいてくれたら、頼りになる。ほんとに、ありがとう。」
そう言ってハプスルーリーは、部屋を出て朝食の用意されている部屋へ向かった。
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