私たちの春~坂上花純編~

1 兄の友人への初恋は中1の時で、あっけなく終わった

 私の初恋は中学1年の時、兄の友達で竹内繁樹という高校2年生だった。バレーボール部で背が高く、私の倍ぐらいあるのではないかと思っていた。兄はよく友達を家に連れてきて、家族と一緒に食事をする事もあった。

「初めまして。妹の花純です。」

「どうも、竹内繁樹と言います。髪が長くてきれいで、可愛いね。」

 私の自慢のロングヘアをほめられて、顔を赤くしながら、その場で好きになっていた。二人が兄の部屋に行ってからも、何をしているのか気になって仕方なかった。

 ある日、兄がコンビニへ買物に出掛け、竹内さんが一人で兄の部屋にいた。私は話がしたくて、部屋を訪ねた。

「トントン!今良いですか?」と言って入ると、彼はあわてて何かを隠した。それは兄がベッドの下に隠してあったエッチな本だと分かった。

「竹内さんも、そういう本を見るんですか?」と思い切って訊いてみた。

「いや、あの、ここにあったから、どんなかなと思って…。」

 竹内さんは困ったような顔をしていたので、数学の問題を教えて下さいと言いながら近付いた。彼は兄よりも丁寧に教えてくれて、私が問題を解くと頭をなでてくれた。兄が帰って来て、部屋を追われたが、私は夢心地な一時を過ごす事ができた。エッチな本を見ている時の顔はだらしなかったが、私に向き合っていた時の彼は、好きな顔に戻っていた。その晩、兄に訊いてみた。

「お兄ちゃん、竹内さんと部屋で何しているの?エッチな事を話しているの?」

「何だよ、突然に。そんな事をしてないよ。勉強の話。そういえば、花純の事をほめてたよ!数学を教えてもらったのか?」

 兄のその一言で、私は有頂天になっていた。

 ある日曜日に、私は友達と買物に出掛けると、竹内さんが前を歩いていた。声を掛けようと思ったが、女の子と仲良さそうに肩を寄せていた。しかも、手をしっかりとつないで、いつも見ている彼とは違う顔をしていた。私はショックで、友達に先に帰ると言ってその場から遠ざかった。

 私の初恋は、あっけなく終わりを告げた。

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