4 生徒会に入った櫻子は、1年生の木之崎碧に的を絞る

 高校2年の秋に、朝比奈杏に生徒会に誘われた。特に生徒会の活動に関心があった訳ではなく、杏を助けてやろうという思いから役員を引き受けた。

 杏と私は頼ったり、頼りにされたりの仲で、お互いに信頼し合っていた。杏が私に恋愛の相談をしてきた事もあった。一つ上の現会長を好きになったが、どう行動したらいいかという話だった。その時、適切な助言ができたかどうかは不明だが、杏は思い通りに恋を成就させていた。

 一方、私もこの生徒会入りがきっかけで、一人の男の子と知り合った。これまでの2年間は、美術部の先輩やバスの中で声を掛けてきた他校の男子と、少し付き合っては好きになれずに別れていた。キスを求められた事も何度かあったが、すべて拒否して現在に到っている。

そんな私が好意を持ったのは、生徒会の1年生の木之崎碧だった。しかも同じ美術部の後輩で、背は私が162㎝で高い方だが、それより低く痩せていて、女の子のような男の子だった。良く私に懐いていて、犬コロみたいに甘える所もあり可愛らしかった。その時、私の悪い癖がよみがえっていた。ある日、

「碧君、今度私の家に来ない?」と誘い掛けた。

 私の家は父親が病院の勤務医で、母親は看護師だったが今は専業主婦で家にいる。姉は薬剤師になるために、一人暮らしをして大学に通っている。あえて母親がいる時に、彼を家に招待した。母は私が男の子を連れて来た事に驚いていたが、構わず自分の部屋に連れて行った。

 碧君はリスみたいに、辺りをキョロキョロ見廻していた。私は少しからかってやろうと思い、制服を脱いで着替えを始めた。

「今から着替えるから、こっち見ちゃ駄目だからね!」と言うと、彼は固く目を閉じていた。こういう所が従順で好きだ。もう少しからかって反応を見てみようと思い、ミニスカートをはいて、ベッドに腰掛けていた彼のすぐ隣に身体を寄せて座った。彼はビクッとして、私から離れていた。

「碧君は、女の子の部屋は初めて?」

「いえ、姉がいるんで初めてという訳ではないですが、いい匂いがしますね。」

「あーそう?じゃぁ、女の子には一応免疫があるんだね。」

他愛のない会話をして、その日彼は1時間程で帰って行った。

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