第17話 改造人間サマーン~恋愛変~
今日は、田所さんとバイトで繁華街に来ていた。
田所さんは、ピンクのワンピース姿で、すごくかわいかった。
俺と田所さんは、カップルという設定で、ある人物を尾行していた。
それは不倫の疑いのある男で、今、まさに、愛人とラブホテルに入ろうとしているところだった。
俺と田所さんは、人混みで離ればなれにならないように、手を繋いでいた。
俺は、少しだけ、どきどきしていた。
何か。
久しぶりに、甘酸っぱい青春のかほりがしていた。
「あっ!入りますよ、佐山君、写真!」
田所さんが言って、俺は、スマホで男と愛人がラブホテルに入っていく写真を何枚か撮った。
しかし。
田所さんが言った。
「私たちも、ラブホテルに入りましょう」
「ええっ!」
俺は、驚いてきいた。
「何で?」
「この写真だと、無実を主張されるかも、だからです」
「そうなの?」
俺は、所長から、ラブホテルに入るのを押さえろ、と言われていたのを思い出した。
確かに。
入り口の写真だけだと、信憑性にかけるのかもしれない。
俺と田所さんは、そのまま、ラブホテルへと入っていった。
男と愛人は、部屋を選んでいるところだった。
俺たちは、その横で隠れるようにして立っていた。
愛人の綺麗なお姉さんが、言った。
「かわいい、高校生かしら?」
俺と田所さんは、真っ赤になった。
お姉さんと男は、クスクス、笑いながら言った。
「がんばってね」
俺たちは、二人の隣の部屋を選んだ。
「わぁ、すごいですね」
田所さんが、部屋に入るなり、ベットに飛び乗って、跳ねだした。
「ふかふか」
俺は、さっきのカップルが部屋に入るところを撮った写真を確かめると、言った。
「じゃあ、俺は、これで帰るから」
「ええっ」
田所さんが、残念そうに言った。
「何で?もう少し、遊んでいこうよ、佐山君」
「ラブホテルで、何、するってんだよ?」
俺が言うと、田所さんが、少し、すねたように言った。
「佐山君のいじわる」
「ええっ?」
俺は、どきっとしてしまった。
田所さんは、ベットに腰かけて、俺を上目使いに見上げて言った。
「私、佐山君にならあげてもいいんよ?」
「マジで?」
俺は、ドキドキしながら、田所さんの隣に座った。
静かだった。
俺たちは、二人とも、黙ってじっと座っていた。
そのとき。
隣の部屋から、声がきこえた。
「ぁん、う、あっ、あっ」
「ええっ?」
俺は、焦って言った。
「ここ、壁、薄いな!」
「佐山君!」
田所さんが、俺を押し倒した。
小一時間後。
俺と田所さんは、ベットの中にいた。
俺たちは、本物のカップルになった。
俺は、生きてる幸せを噛み締めていた。
不意に、田所さんの携帯が鳴った。
田所さんは、携帯を取ると、言った。
「あ、田中君?」
俺は、びくっとなった。
田中君?
いや。
そんなわけないじゃないか。
俺は、頭を振った。
いくら、あのストーカー田中君でも、こんなところまでは、追ってこないだろう。
「うん、わかった」
田所さんは、にっこりと笑って、俺に携帯を差し出した。
「はい、佐山君」
「え?何?」
問いかける俺に、田所さんは、言った。
「田中君が、話があるって」
「ええっ?」
俺は、驚いて、恐る恐る田所さんの携帯をとって、耳元へと持っていった。
「おめでとう、直之。大人の階段、昇ったんだね」
「た、田中君!?」
俺は、びびりまくっていた。
「何で?」
「その女は」
田中君だ言った。
「僕の、生き別れた姉、だ」
「マジで?」
俺はどうするべきかと思って、田所さんを見た。
田所さんは、さっさと服を着ていた。
「え、ちょっ、田所さ」
「じゃあ、またね、佐山君」
田所さんは、笑顔で去っていった。
俺は、はめられたのか?
そう思っていたら、田中君が言った。
「心配しなくても、いいよ、直之。姉さんは、すでに、調教済みだ。これからは、3人で楽しもうね」
「はい?」
俺は、耳を疑っていた。
すると、田中君は、言った。
「3人で連結電車ごっこしよう」
「ええっ?」
俺は、きいた。
「何、それ?」
田中君が、笑った。
「これから、楽しみだね、兄さん」
「ええっ?」
俺は、お前の兄さんじゃねぇ!
と言おうとしたとき、通話が切れた。
マジで?
俺は、叫んだ。
「誰か、嘘だと言ってくれ!!」
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