第8話 抜き打ちテスト?
「聞いたか、次のキョーコ先生の授業テストするらしいぜ」
授業と授業の合間に挟まれる僅かな休息の時間。生徒は思い思いの行動を実行する。
次の授業の予習をする生徒、トイレに向かう生徒、空腹を満たす生徒。そんな中、俺は秋人と岡崎と短い時間で駄弁る。
「ソースは?」
まるでいつかの仕返しとでも言わんばかりに、岡崎がメガネを光らせて言う。
「職員室に行った奴が生徒の机の上にあるの見たって」
「フン、結局その目で見たわけではないのか。それをソースとするならば、この世界のあらゆることが証拠付けられてしまうぞ?」
「例えば?」
あまりにもドヤ顔で言うものだから、俺は聞いてみた。
「ん? そうだな……それこそ、河童やツチノコ、ビッグフットといった未確認動物とかな。目撃情報だけが交錯しているが確証はどこにもないんだ」
「他には?」
俺の質問に秋人も乗ってくる。
「噂だ何だをソースとできるなら、結城先生処女説だって有効だろ?」
「それは見てねえだろ」
「しかし、日野坂だってテストを見てないんだろ? 噂がソースとなるのならば同じだ」
「キョーコ先生が処女だって噂あんの?」
「どこかで聞いたような気もする」
「絶対聞いてないだろ」
俺は呆れて溜め息をつく。
「これから流せば問題ないか?」
「大アリだ。名誉毀損だぞ?」
こいつは一体何を言い出すんだ。あの人気にして寝込むぞ。何なら適当な男見つけて処女喪失するまである。
そもそも処女なのか知らんけど。
「バカなこと言ってないで、テストの予習でもしたらどうだ? お前らあんまり成績良くないんだからさ」
確かにその通りだ。
でも秋人にそれを言われるのは何だか釈然としない。
「どっちかっていうとキャラ的にはお前が勉強苦手であれよ」
「別に得意じゃないけど。お前らよりマシってだけだぞ」
なんて話をしているとチャイムが鳴る。
ガラガラとドアを開けて先生がご機嫌な様子で入ってきた。
「んー、どうしたのかな? さては何か嫌な噂でも耳にしたのかな?」
いたずらに成功したような笑みを浮かべて先生は教卓についた。
先生がくれば生徒は自分の席に戻る。結城先生は若いこともあって生徒との距離が比較的近い。そのためフレンドリーに接することがあるが、彼女に舐めた態度をとる生徒はいない。
特に男子。
その根源には、嫌われたくないという思いがあるのだろう。それは女子にも言えることで、みんな割と真面目に授業は受ける。
「みんなご察しの通り、今日は抜き打ちテストでーす! まあ、ご察しなので抜き打ちではないですが!」
一人テンションの高い先生、それとは真逆で生徒はがっくりと肩を落とす。
「ちなみに」
テンションの高い先生は付け足すように強調してそんなことを言う。
「成績の悪かった生徒さんには、特別補習にご招待しまーす!」
さすがにブーイングが起こった。
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