社長

白咲夢彩

第1話

 

「社長、そんなに悩んでどうされたのですか?」


「あぁ……」


「話してみてはどうですか?聞きますよ?」


 悩みを聞くと私に言ってきてくれた彼女は、頼りになる私の秘書だ。もう、彼女とは十年以上共に会社で過ごしただろうか。今では、私の微かな溜息でさえ気にかけて、大丈夫かと声を掛けてくれる。そして、小さな変化に気づきながら、仕事を円滑に進めてきてくれた彼女のおかげで、私はとても救われている。そんな彼女に、私はいつもと同じように自分の悩みを吐き始める。


「いやぁ、女房のことでな」


「奥様となにかありました?」


「いやぁ……喧嘩とかではないんだが……」


「珍しいですね、そんなに深く悩んでいらっしゃるなんて」

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