幸田ユメカは未来を夢見る
@15jourin
第1話 日記
日記
幸田夢叶
プロローグ
いつからだろう。
夢で見たことが、本当になるようになったのは。
より正しい言い方をするならば、夢で未来が見えるようになったのは。
予知夢と言うべきなのか。
正夢と呼ぶべきなのか。
まだはっきりしないんだけれども。
ともかく。
これは、私の日記だ。
言うまでもなく。
私、幸田夢叶(コウダ ユメカ)の日記だ。
日記と言っても毎日毎日真面目に付けている訳じゃなく、数日前のことを頑張って思い出して書いたものだから、正確性には欠けるかも知れない。と言っても、私は夏休みの絵日記を放っていた小学生ではない。
私は高校3年生。ショートの黒髪は艶やかで、肌は少し褐色の、華の女子高校生である。二重まぶたで大きめな目がチャームポイント。この前までテニス部に所属してたから焼けてるんだけど、もう引退しちゃったから体力も落ちて欠片もない。残ったのは美しいスレンダーな身体だけです。自己申告。
小学校の夏休みの宿題との共通点と言えば、まぁ、夏の話ではあるというのは、共通していると言えなくもないな。これは、普段日記なんてつけない私が、丹羽さんに言われて付け始めた、ひと夏の記録なのだから。だけれども、ひと夏と言っても、初夏の短い期間だけの話だ。
心配しなくても、丹羽さんが誰なのかっていうのは、まぁ、その内出てきますよー。「誰なのか」って言うよりは「私からはこういう人に見えた」ってことになるけど。でもあんまり捉え所のない人って感じだしなぁ。少なくとも、今のところは。「今のところ」ってのがいつのところなのかも、読んでいれば分かるかと思います。まぁ、これから段々丹羽さんのキャラクターも掘り下げられていくかもしれないしね。とにかく、その丹羽さんに、
「出来れば数日前から、正夢を見るようになった日の昼間辺りから詳しく教えて欲しい」
と言われたものだから、机に向かって記憶を絞り出しているのだ。何を見て何を感じたのかまで書いて欲しいとは、それじゃあまるで小説じゃないか。日記なのか小説なのか微妙なところだから、時間軸はどうしよう?まぁ、気にしたところで書き分けるような技術もないのでごちゃごちゃになると思います。大宅世継が語る大鏡みたいなものだと思ってご容赦ください。おっと、大鏡だってさ。私も受験生になったもんだ。知性が溢れ出ちゃってる。「知性が溢れ出ちゃってる」って台詞がもう知性の欠片も感じさせないけど。
それはさておき、数日前の日記を書くにあたって憂慮すべきことなんだけれど、私は記憶力が良い方じゃないと思う。勉強でも暗記は苦手だ。というか、暗記が1番苦手だ。それは、キッチーとお話して痛感したことだけど、私のアイデンティティなんだから仕方がない。ん?キッチーが誰なのかっていうのも後で分かります。割とすぐに登場します。こっちの方はこれからキャラクターが掘り下げられることはないでしょう。あんまり短くない付き合いだし。
まぁ、だから、とにかく悩みながら、何度も何度も書き直しながらシャーペンを走らせているわけである。
受験勉強すら真面目にやってない私がね!こんなに机の上でノートに文字を書くなんて!めっずらすぅい!褒めて!誉めて!
という訳で、話は1週間程前へと遡る。ちなみに私は「という訳で」と言われた時に、それがどういう訳なのかちゃんと理解できたことがないんだけど。
閑話休題でした。
とにもかくにも、1週間ほど前。今週の初め。
何の変哲もない朝と何の変哲もない学校生活を過ごした、という記憶しかない、よく晴れた月曜日だった。いや、1つだけ、個人面談があったのは覚えている。先生と2人で成績とかについて話し合って、お小言なんかを貰うアレだ。それじゃあ、その個人面談のことから書き始めよう。
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