第4話



私は裏山を登っていた。

さっき山のてっぺんに雷が落ちる凄まじい音が聞こえた。それはきっと、私が打たれた雷だ。

信じられない……本当に信じられないことなんだけれど、私は本当に雷に打たれていて。きっと、その衝撃で少しだけ過去にタイムスリップしていたんだ……!


裏山のてっぺんにたどり着くと……

「美咲!」

私は大好きな……高校に入ってからずっと好きだった人の声を聞いた。

「達也くん……」

「美咲……良かった。美咲~」

彼は私をギュッと抱きしめて。その体温が私の心にまで伝わってきた。

「でも、どうして……? 美咲が雷に打たれていなくなって……俺、必死で、死ぬほど必死になって探していたんだ。そしたらお前……来た山道を登ってきて……」

「うん……きっと私達、雷に打たれた夢でも見たんだよ」

「えっ……」

私は微笑みながら、狐につままれた顔をする彼の唇に自分の唇を重ねたのだった。

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雷の夕刻に いっき @frozen-sea

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