時空を超える刻のアーティファクト
にこら
第1話 刻の砂時計
港町リンデに向かうためセレナ海岸を歩くアルド。
アルド「たまには合成鬼竜に乗らずにこうやって歩くのもいいよな」
アルド「今日は皆からリンデで宴があるって聞いてるけど、待ち合わせにはまだ時間に余裕があるな..!」
アルド「少し散歩でもするか」
海岸沿いを歩くアルド。そのとき、アルドにめがけて小石が飛んできた。その小石はアルドの頭に直撃したようだ。
アルド「いたっ!何だよ危ないなぁ」
急に飛んできた小石に首を傾げていると、岩陰より呻き声が聞こえてきた。
???「...ぅう..」
アルド「...ん? 何かそこの岩陰から声がしたような」
岩陰の後ろへ歩くアルド。そこには地べたに倒れた男性がいた。そして、その傍らにはエイヒ(魔物)がおり、男性は今にも襲われそうだ。
アルド「え!大変だ!おい、アンタ大丈夫か?」
すぐさま戦闘態勢に入るアルド。魔物を倒し、男性に駆け寄る。
男性は特に外傷もなく、朧げではあるが意識もあった。アルドは男性の傍で介抱し、数分、時が流れた。
男性の意識がはっきりとし、アルドに話しかける。
???「すまない... 身体は特に異常はないんだが、立ち眩みしてしまってね。ありがとう、キミのおかげで助かったよ...」
男は20歳前後に見える青年で髪は金色の長髪。肌は褐色だった。この時代では見慣れない服装をしており、アルドは怪訝に思ったが、男性の容体を優先した。
アルド「アンタが無事でよかったよ!」
アルド「でも何だってあんなところに倒れてたんだ?」
沈黙する男性。
???「...らない...」
アルド「..ん?」
???「分からないんだ。何故、この場所で倒れていたのか... 自分の名前以外思い出せないんだ...」
アルド「えっ!それって...」
アルド「記憶喪失ってことか?」
???「あぁ... そうだと思う... 」
アルド「そうか...ちなみにさっきから気になっていたんだけど、アンタの手に持っているそれは何だ?」
男性の手には砂時計が握られていた。古ぼけたような今では珍しい装飾されている砂時計であった。
???「これか?砂時計のようだけど...これも思い出せないな...ただ...」
アルド「ただ?」
???「すごく大事なものってのは覚えてるんだ。これは手放しちゃいけないってね」
アルド「そっか。記憶を失っても覚えてるってことはアンタにとってすごく大事なものなんだろうな」
アルド「記憶がないっていうのも不安だよな...邪魔じゃなければ、俺にもアンタの記憶が戻るまで何か手伝わせてくれないか?」
???「キミはすごくお人好しだな... でも、助かるよ
。ありがとう」
???「そういえば自己紹介まだだったな。といっても名前以外はわからないのだがな」
マキア「俺の名前はマキアだ」
アルド「俺はアルド。旅の剣士をやってる。よろしくなマキア!」
アルド「じゃあ、マキアの記憶の手がかりを探そう!その砂時計大事なものって言ってたよな?
何か書いてあったりしないかな?」
マキア「う〜ん?特にはなさそうだけど」
ふとした瞬間にマキアは砂時計を一瞬上下逆さまにした。その瞬間マキアを中心に光の波が現れ、その光の波はアルドものみこんだ。
2人の意識はそこで途切れた。辺りは暗転し、2人の会話で幕は上がる。
アルド「...ないっていうのも不安だよな...邪魔じゃなければ、俺にもアンタの記憶が戻るまで何か手伝わせてくれないか?」
マキア「キミはすごくお人好しだな... でも、助かるよ。ありがとう。」
マキア「そういえば自己紹介まだだったな。といっても... ってアレ? アルド?」
アルド「ん?アレ?何で俺の名前を...」
アルド「マキアじゃないか!?どうなってるんだ!?」
アルドとマキアお互い何が起こったか理解できず、混乱していた。
マキア「そういえば、俺らは光の波にのまれて...」
アルド「マキアの手に握ってる砂時計が光ったと思ったら、俺はマキアのことを忘れてたんだよな」
マキア「もしかしてこの砂時計は...」
瞬間マキアに衝撃が走る。
マキア「うっ頭がッ!!!」
アルド「大丈夫か?マキア」
マキア「少しだが...思い出してきた... この砂時計は刻のアーティファクトだ...」
アルド「刻のアーティファクト?」
マキア「そうだ... 12の時を刻む刻のアーティファクト。これはそのうちの1つだ。」
マキア「おそらく、この砂時計は時間を逆流... いや俺達の意識を過去に送り込んでいるのか..?」
アルド「時間を逆流だって!?すごいじゃないか!?」
マキア「しかし、奇妙な感覚だったな。時を戻せるのはすごく便利だし、何かに使えそうだよな!!」
マキアはすごく楽しげではあるが、少し悪意を感じる言葉にアルドは反応する。
アルド「...悪いことには使うなよ?」
マキア「大丈夫だってアルド。俺がそんなに悪いことするやつに見えるか?」
アルド「それならいいんだけど...」
アルド「話はそれたけど、マキアの手がかりだったよな。砂時計の装飾もだけど、マキアの服装を見る限り、この時代の服装ではないよな」
マキア「??この時代?どういうことだアルド?」
困惑した様子のマキアにアルドは自身の旅が時空を超えるものであることを打ち明けることとした。
アルド「あぁ、信じられないかもしれないけれど俺達は時空を超えて旅をしているんだ。」
マキア「時空を超えてだって!?」
アルド「あぁ...実は..」
暗転し、アルドとマキアの会話で幕は上がる。
マキア「なるほど...それで旅をしているのか。にわかには信じられないがこんな砂時計もあるくらいだし、ありえない話ではないんだろうな」
マキア「でも、アルドもなかなか大変な境遇にいるな。アルドも見つかるといいな。大事な人を救う手がかりを」
アルド「あぁ、大変な道だけど、仲間がいるから前を向いて進めるんだ」
アルド「これからその仲間達と宴をリンデでやるつもりなんだけど、マキアもこないか?」
アルド「いろんな時代の仲間達がいるから、マキアの服装や出自についても何か分かるかもしれないし」
マキア「それは助かるな!宴も参加できて一石二鳥だしな」
アルド「それじゃあリンデに向かおうか」
マキアと出逢ったことで、いつも歩いていくルートとは違い、少し遠回りにはなってしまったが、アルドの目的地は変わらない。
セレナ海岸を歩いてリンデに向かっていく2人。
その数十メール後方にはフードを被った人物が岩陰から2人を見ていた。
フードの人物「どういうことだ? 」
フードの人物「なぜアイツは何故生きているんだ!?そして隣のヤツは...!」
フードの人物「...まぁいい.. どういう道を歩んだとしても結果は同じことだろうしな。せいぜい足掻くがいいさ。」
フードの人物「お前らにもいずれ聞こえるだろう。黒い風の音が...」
フードの人物は闇に紛れて消える。誰もいなくなったセレナ海岸にて黒い風の音が鳴り響く。
場面は一転し、港町リンデに着いたアルドとマキアの会話で幕は上がる。
リンデの街は宴の準備で大忙しのようだ。
マキア「この町はすごい活気だな。普段からこんな賑わってるのか?」
町の意外な活気にアルドも戸惑う。
アルド「いや。いつもはこんな感じじゃないな」
アルド「(そういやエイミ達が東方や他の国々からも集まるリンデの感謝祭って言ってたな)」
マキア「人が出逢い、町が賑わう。なかなかこの町は好きになれそうだな」
ドンっと音が鳴りマキアは蹌踉めく。
マキア「おっと」
女の子「いった〜い。あっ...」
どうやらマキアに走っていた女の子が後ろからぶつかったようだ。女の子は地べたに倒れ、女の子が持っていた箱が落ちていた。
女の子「ごめんなさい、お兄さん」
女の子は半泣きになりながらマキアに謝ってきた。
マキア「大丈夫だ。お嬢ちゃんこそ怪我はないかい?」
女の子「うん...でもお母さんにプレゼントするケーキぐちゃぐちゃになっちゃった」
アルド「2人とも怪我はなくてよかった。ケーキは残念だけど、代わりのものでよければ俺達が用意するよ」
女の子「ううん、アレじゃないとダメなの。今日のために特注したケーキだもの」
アルド「そっか...」
マキア「まぁ、お兄さん達にまかしときなって。お嬢ちゃん。ちょっと向こう向いて俺達から離れときな」
女の子「? うん」
アルド「マキア!?何か方法があるのか?」
マキア「あのなぁ...アルド。意外とニブチンだな」
アルド「ニブチンって...今はそんなことどうだっていいだろ?どうやって女の子の特注ケーキを用意するんだ?」
マキア「俺達には刻の砂時計があるだろ?時間を戻してあの女の子とぶつかった事象を回避するのさ。そうすればあの女の子もケーキも無事さ」
アルド「そうか!!砂時計の力で...! 」
マキア「そういうこと。まぁ、見てろって」
マキアが砂時計を上下逆さまにする。
セレナ海岸で砂時計を一瞬逆さまにした時と比べて比較的長い時間逆さまにしていた。
その瞬間光の波が発生し、マキアとアルドを飲み込む。
マキア「対象は砂時計の中心から3メートルってとこだな」
辺りは暗転し、2人の意識は遠のく。その場に1人残された女の子は2人に尋ねる。
女の子「お兄さん達もういい?」
女の子が問いかけるも、2人の反応はない。
しびれを切らした女の子が振り向きあたりを確認する
女の子「お兄さん達?どこいっちゃったんだろ?」
リンデ到着時の2人の会話で幕は上がる。
リンデの町の中に入るアルドとマキア。
マキア「この町はすごい活気だな。普段からこんな賑わってるのか?」
町の意外な活気にアルドも戸惑う...戸惑う...
アルドが戸惑っている理由が町の活気ではないことに気づく。自身がすでに経験していることにアルドは気付き、マキアの顔を見る。
唐突なアルドの反応を見て、どうやらマキアも気づいたようだ。
マキア「どうも慣れないな。少しボンヤリするような」
アルド「そうだよな。思い出すまでに時間がかかるんだよなぁ」
マキア「どうも砂時計を上下逆さまにしている時間で戻れる時間が変わるみたいだな」
アルド「そうなのか?」
マキア「セレナ海岸で時間を遡った時に比べて少し過去に遡ってる時間が長いだろ?」
アルド「言われてみればそうかもしれないな」
マキア「あと対象範囲も狭いしなぁ、あの女の子も戻ってるわけじゃなさそうだし、俺とアルドだけみたいだ」
マキア「物とかは対象じゃなく人だけみたいだしなぁ」
自分の世界に入り、1人でブツブツと砂時計について考察するマキアを見てアルドは慌てる。
アルド「マキア!マキア!そろそろ女の子が来る頃じゃないか?」
マキア「おっと!そうだな!本末転倒になるとこだった!」
ちょうどマキアの後方から足音が聞こえてきた。後方からの足音はかなり急いでいるようだ。
マキア「おっと」
女の子が走り込んできた。それを余裕を持って回避するマキア。
マキア「危ないぞ、お嬢ちゃん。大事なもの持っているなら急がば回れ、だ」
女の子「あぶなかったぁ〜。ありがとうお兄さん。でも何で大事なものって分かったの?」
マキア「そんなに大事そうに抱え込んでいたら誰だってわかるさ。お母さん待ってるんじゃないか?」
女の子「うん。ありがとう」
歩いていく女の子。マキアとアルドから離れて行く。
アルド「次はちゃんとお母さんの元に届けれるといいな!ケーキ!」
マキア「きっと届けれるさ。あの子なら」
アルドの当初の待ち合わせ場所であるリンデの酒場前に着き、会話するアルドとマキア
マキア「アルド」
アルド「なんだ?マキア」
マキア「今回の件で分かったよ。俺は人が好きなんだ。」
アルド「えっ!?急になんだ?」
マキア「リンデの人の賑わいやさっきのお母さんにケーキを届ける女の子を見てて思ったんだよ」
マキア「俺は人と関わったりするのが好きなんだと思う」
アルド「マキアは記憶を失う前もきっと人を助けたりしていたのかもな」
アルド「今回だってちゃんと刻の砂時計を他人のために使っていたんだ。きっと記憶を失う前のマキアだって同じことをしていたんだと思うよ」
マキア「まぁ、初めはこの砂時計を使ってどうやって大儲けしようか考えてたけどな」
豪快に笑うマキア
アルド「(やっぱり思っていたのか...)」
苦笑いするアルド
マキア「でもな...アルド」
マキア「この力を他人のために使うのも悪くないなって思ったんだよ」
マキア「どっかの誰かさんのお人好しがうつったのかもしれないな」
マキア「はじめ記憶を失ったときは孤独で不安で仕方なかった。意識も朦朧として、倒れたところを魔物に襲われそうになるしな」
アルド「マキア...」
マキア「でも、アルドお前が助けてくれたんだよ。記憶がいつ戻るか分からないけど、それまで一緒にいてもいいか?」
アルド「あぁ!!もちろんだ。こちらこそよろしくなマキア!」
アルドとマキア2人はリンデの酒場に入る。
2人がリンデが酒場に入る様子を見るフードの人物。
フードの人物「やはり、刻の砂時計を持っていたのか」
フードの人物「しかし何故アイツが...」
第一話 完
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