2ー10 妹の実力
12/16 20時過ぎ。
10部に1ー9 三人称:エンド王子の後ろ盾を割り込みで投稿しました。そのため、おそらくみなさんのブックマークが一話ズレています。混乱を招いてすみません。まだご覧でない方は、いまから読んでも楽しめると思うので、よろしければご覧ください。
◆ ◆ ◆ ◆ ◆
クリフォード王子が以前にも声を掛けていた仲間候補。そんなティリアだが、まさかここまでパワータイプだとは思っていなかったのだろう。
息を呑んで俺達の試合を見学していた連中から溜め息が零れる。
だけど――
「お兄ちゃん、このまま引き分けで終わるなんて言わないよね?」
「もちろん、本番はこれからだ」
俺の言葉を受け、ティリアが首筋向けて剣を押し出した。俺はとっさに首を捻って回避し、自分の剣でティリアの剣を側面へと弾いた。
同時に立ち上がり、振り返りざまに右腕を振るう。
だが、その先にティリアはいなかった。
「こっちだよ、お兄ちゃん!」
側面に回り込んだティリアが、死に体になった俺に剣を振るう。
「――掛かったな」
ティリアの剣が届く寸前、左腕に持った剣でその一撃を弾く。
右手を振るったのはフェイク。
ティリアが回り込んでいるのに気付いて、わざと剣を持たない腕を振るったのだ。
今度はティリアが剣を弾かれて死に体になる。
対して、俺は空いた手でティリアに掴みかかる。ティリアはとっさに下がるが、不意を突いた俺の方が早い。胸ぐらを掴んだ俺は、慌てるティリアを思いっきり投げ飛ばした。
だが、ティリアは自ら飛んで空中で姿勢を制御する。
「まだだよっ!」
「いいや、終わりだ」
着地したティリアの胸に剣を突きつける。この状況から、ティリアが勝ち筋は残っていない。それを理解したティリアは――にへらっと笑った。
「ん~、やっぱりお兄ちゃんは強いなぁ~」
清々しいほどに潔く負けを認める。
自分が負けたというのに、どことなく誇らしげに見えるのは気のせいなのだろうか? 彼女はクリフォード王子に一礼して下がった。
俺も剣を鞘に収め、クリフォード王子へと視線を向ける。
「満足いただけましたか?」
「十分だ。これで、彼女の加入に文句を言う者は……いや、文句を言う者はいないが、挑戦したがる者は増えてしまったようだ」
クリフォード王子の視線をたどれば、仲間である学生の騎士達がさっそくティリアに挑んでいる。どうやら、しばらく訓練は終わらなさそうだ。
ティリアが次々に挑んでくる学生騎士達と戦っている。ティリアの相手は同い年か年上ばかりだが、勝率は五割を優に超えている。
自分よりもずっと体格の良い騎士を相手を力でねじ伏せている。
「ノアの妹はなかなかの曲者だね」
「……ええ。見かけによらずパワータイプってだけでも厄介なのに――」
ティリアと鍔迫り合いで競う相手が、ムキになって押し込んだ。
刹那、ティリアは身体を捻って剣を受け流す。
相手はとっさに踏みとどまろうとするが、そうやって身体が浮いたところを押し込まれては為す術もない。尻餅をついたところ、ティリアに剣を突きつけられた。
「見ての通り、意外と技巧派なんですよね」
見た目が華奢なのに力が強い。
そこで力一辺倒だと油断すると、その技術に為す術もなく切り崩される。
だからかどうかは知らないが、ティリアは自分の華奢な見た目を隠そうとしない。むしろ、いまも制服姿で、自分が華奢な女の子であることを前面に押し出している。
あのスカートの下、スパッツを穿いているのだが……見えそうで見えない。見えなければ、スパッツの存在も分からない。
しかも、意識を向けると回し蹴りが飛んでくるなど、なかなかに鬼畜な動きをする。ティリアが妹じゃなければ、俺ももう少し苦戦していただろう。
「ところで、クリフォード王子。俺をお呼びだとうかがいましたが……もしかして、ティリアのスカウトが目当てでしたか?」
「あぁ、いや、彼女は嬉しい誤算だよ。キミに用事があったんだ。知っての通り、学園祭では特派クラスの代表以外に、僕や兄のように王子が率いるチームなども参戦する」
「はい。そのために訓練をしているのは知っています」
特派クラスは、聖女を連れて穢れを浄化する部隊の卵である。そしてこの国の上に立つ者達もまた、穢れを浄化する任務から無関係ではいられない。
そんな訳で、王子を初めとした一部の王侯貴族も、自分で集めた仲間を模擬訓練に参加させる。そうすることで、この国の上に立つ者としての資質を証明するという訳だ。
「それで俺に用事というのは? メンバーは決まっているのですよね?」
「あぁ、もちろんだ。ただ、僕は一年で、二年に兄さんがいるだろ? その辺りの事情で、僕のチームは層が薄くてね。他の種目もあるし、控え選手が決まっていなかったんだ」
「つまり、俺を控え選手にする、と言うことですか?」
「あぁ、キミとクラウディアとティリアの三人、かな」
「……なるほど」
そんな訳で、俺達はクリフォード王子の模擬訓練のメンバーの控えとなった。と言っても、控えが実際に出場することはないだろう――と、完全にフラグである。
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