202012ジャパロボ 1

渋谷かな

第1話 ジャパロボ1

「私! ジャパロボ乗りになる!」

 映画館から出てきた少女は決意した。ジャパロボの映画に感動したのだ。

「大声出さないでよ!? 恥ずかしいよ!? 菜々子ちゃん!?」

 少女の名前は藤菜々子。18才の普通の女子高生。今回の主人公である。

「愛ちゃんもジャパロボ乗りになろうよ!」

「ええ!? 私も!?」

 菜々子の友達、鈴佐愛。彼女も18才の普通の女子高生。

「二人でジャパロボ乗りになろう!」

「勝手に決めないで。」

 この物語は普通の少女がジャパロボ乗りになるという物語である。


 ジャパロボとは、人型二足歩行ロボットのことである。創世は、ゲームセンターのアーケードゲームであった。コクピット型のゲームで、ジャパロボのデザインは、車に手と足を着けただけのものだった。だが、その単純さが実態のロボット開発に大いに貢献した。開発済みの車ならエネルギー系統ははっきりしている。ただ、それに手と足を着ければ、ジャパロボの実機が完成した。


 攻撃方法もゲームらしく、ビームライフル、ビームサーベル、車に変形してひき逃げの三種類だった。現実の実機では、鉄の棒、バズーカ、ひき逃げの三種類。

 ジャパロボの映画「202011ジャパロボ」では、ヒロインで女優の森田祐奈のジャパロボ機体は世界を救う未知なるエネルギーを発揮するが、それは菜々子の世界ではフィクションである。


「やったー! ジャパロボ免許獲ったどー!」

 菜々子はジャパロボ教習所に通いジャパロボに乗るための国家試験に合格し、ジャパロボの免許を手に入れた。ちなみに車の運転免許証と同じで18才から免許を取ることができる。

「筆記試験20回目で、おめでとう。」

「そういう愛ちゃんだって、実技20回落ちたじゃない。私は1発合格だったもんね。」

「いいのよ。筆記は1回で受かったから。」

 菜々子と愛は仲良しであった。

「これでジャパロボに乗れるぞ! イヤッホー!」

 菜々子はジャパロボの運転免許証を手に入れた。


「どこかにジャパロボに乗れるアルバイトはないかな?」

「これなんかどう?」

 菜々子たちはバイトを探していた。

「東京オリンピックの競技場建設か・・・・・・オッサン臭くない?」

「それなら、競技場の警備は?」

「それもなんだかな。もっとオシャレな仕事はないのかな?」

 ジャパロボは建設用の重機扱いなので、カワイイ仕事は中々なかった。

「これだ! 東京オリンピックのパレード! ジャパロボが乗れるカワイイ女の子募集中だって! 私、これに決めたわ!」

 求人募集に急いで応募する菜々子。

「できた! エントリー完了! 愛ちゃんの分も応募しといたわよ!」

「だから勝手に決めるなって。」

 こうして菜々子たちは東京オリンピックを盛り上げるパレードにジャパロボ乗りとして参加する。


「2020年! 東京オリンピックを盛り上げよう!」

 パレードが始まった。

「やったー! ジャパロボのコクピット! わ~い!」

 菜々子はジャパロボに乗れて嬉しがっている。東京オリンピックのパレードに使用されているのは、日本政府が見栄で開発した最新鋭の02型二足歩行型のジャパロボだった。

「ウワアアアアア!? これどうやって動かせばいいの!?」

 コクピットでパニックになっている愛。

「大丈夫よ。ジャパロボにはAIが搭載されているから、プログラム通り勝手に動くわよ。」

「ふ~う。良かった。」

 二人はジャパロボの無線で会話をしている。

「パレード! スタートです!」

 東京都知事や東京オリンピック代表選手が二階建てのオープンバスに乗って笑顔で手を振っている。沿道にはパレードを見ようとたくさんの人々がやってきて歓声をあげている。

「盛り上がっているわね。東京オリンピック。」

「そうね。みんな、幸せそうだわ。」

 パレード用のジャパロボに乗っている菜々子と愛も幸せを感じる。


 ドカーン!


 その時だった。パレードのバスや沿道のビルが爆発した。

 つづく。

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