第1話 桜の花びらみたいな少女

 別に用も済んだのだし、戻ってお昼を取るべきであったが、何故かその場を離れることが出来ず彼女を見つめていた。


 ふと声が止み彼女が振り返る。髪が顔にかかり、やはり泣いていたのか大きな瞳は微かに赤く染まっている。


 結構、可愛らしい女の子である。だが、顔色が青から赤に変わり、黙りこんでいるのと、やや三角につりあがった目線に怒りの色が浮かんでいるのに、俺は恐怖を感じた。


 ましてや興味本位で見てたなど本音を言えば、泣きわめきヒステリーをおこされそうか、ビンタでも思いっきりくらいそうで、俺は言葉もなく黙りこんでいた。


 沈黙の時間が長かったのか短かったのかの記憶は俺にはない。


 ただはらはらと散る花びらの桃色かつ淡い色合いや、桜の木の下で日陰に入る花びらが一瞬陰りを帯びて、ブルーブラックと形容できる黒みを帯びた暗い青に変わる有り様をただ呆然と見ていた。


 そして、のちに思ったことだが、この少女自体がそんな桜の花びらみたいであった。


 






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