1 物語の始まりはいつも急展開
青年が一冊の漫画を読んでいた。その漫画のタイトルはイケメン王子の英雄譚。
「英雄…ね。ただのハーレム漫画だな」
青年は漫画本を投げ捨て、ベッド横になる。そして、青年は睡魔に襲われて瞼を閉じた。
「もう朝かっ」
鳥の鳴き声と、眩しい陽射しに照らされて目が覚めた。
「ん!何かおかしい?」
自分の手のひらが異様に小さい?声が出せない?
「あー、うー」
いつも通りに声を発声しているつもりが、声をあーうーしか言えない?
「ここは何処だ?」
見覚えのない天井?俺は自分の部屋で寝ていたはずなのに?
「!?」
大きな目をした少女が、俺の顔を覗いている。少女は笑顔で俺のほっぺををツンツンしてくる。
「母様、ナガシが起きたよ」
少女は母親?を大きな声で呼び始めた。そしてドタドタと足音が近づいてくる。まさかと思うが…俺は赤ん坊?
ナガシ?俺の名前?今気づいたけど、この部屋かなり豪華。赤ん坊である俺に対してこの高級感。ふかふか、柔らか。
そして、すぐに足音の主は現れた。誰だこのオッサン。
「ナガシ、今日も元気そうだな。良かった、良かった。父さんも元気だぞ」
「え!?」
俺の父親なの!このオッサン!オッサンは愛おしそうに、俺の頭を撫でる。人に頭を撫でられたのは、何年ぶりだろうか。
オッサン改め、お父さんは俺の額にキスをする。ちょっとむず痒い。気恥ずかしいというべきか。
だが、これはきっと夢だろう。そのうち夢から目覚めるはずだ。たぶん…。
「ナガシ、ご飯を一緒に食べような」
そう言って俺を軽々と抱き抱え、お父さんと少女は何処かへと歩き始めた。
歩き始めて数分、って何だこの建物。広いし、豪華だし。
「それにしても、とても裕福な家庭に生まれたんだな。俺の夢だけあってリアリティがない」
「ナガシは何を言ってるかわからないが、今日も元気だな」
「ズルいです父様。父様、私にもナガシを抱かせてください」
「む、メンヘラもナガシを抱きたいのか?仕方ないのー、落とさないように気をつけるんだぞ」
メンヘラと呼ばれた少女は、壊れ物を扱うように優しくナガシを抱き抱えた。
「ほら、お姉ちゃんだぞー」
金髪の大きな目をした美少女。この女の子が、俺の姉?
「もー、可愛いなー」
メンヘラはナガシの頬っぺたにすりすりする。
そんな二人を羨ましそうにお父さんは眺めていた。
「あなた、メンヘラ、いい加減にしてください。朝御飯が冷めてしまいます」
呆れたように一人の女性が遠くから声をかけた。遠くからでもわかる綺麗な服を着たこの美人の女性が俺のお母さん?
「テリーヌすまない、忘れていた」
「まったく、あなたもメンヘラも、いくらナガシが可愛いからって」
「悪かった。すぐに行く」
そう言って、俺を抱き抱えたお父さんとメンヘラは、ダイニングへと向かった。
悪役王子のゲスい建国記 七星北斗(化物) @sitiseihokuto
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