僕の隣にはおねぇがいる

タマゴあたま

僕の隣にはおねぇがいる

「ねえ、いま暇?」


 きれいな女の子が話しかけてきた。ナンパってやつかな。「そういうの困ります」って言おうとした時、


「あーら。可愛い女の子じゃない! でもごめんなさい。この子はあたしのものなの」


 そう言うと隣の男は腕を組んできた。


「へ、へー。そうなんだ……。邪魔しちゃったね。バイバイ」


 女の子は去っていった。めちゃくちゃ顔を引きつらせてた。


「もー。見たあの顔? 失礼しちゃうわ」


 ぷーっと頬を膨らませる。

 そりゃあんな顔にもなるだろう。

 なにせモデル顔負けのイケメンがおねぇ口調なんだから。


「もういいでしょ。腕離して」

「あら、ごめんなさい。でも照れることないわよ」

「照れてない」


「あのー。モデルに興味ありませんか?」


 今度はスーツ姿の女性だ。差し出された名刺をおねぇが素早く受け取る。

 僕は横からのぞき込む。どうやら有名なメンズ雑誌のスカウトのようだ。


「だめよ。この子そういうの興味ないから」

「え? いえ、そうではなくて……」

「屁理屈は聞きたくないわ。さあ行ってちょうだい」

「は、はあ。では失礼します」


 女性はぺこりとお辞儀をして去っていく。


「話を聞くだけなら良いんじゃないの?」

「詐欺だったらどうするのよ。騙されてからじゃ遅いわよ」

「そんな人には見えなかったけどな」

「人は見かけによらないものよ」

「そうかもね」


「ねーお兄さんたちー。ウチと遊ばない?」


 今度はギャルだ。髪型とか服装とかいろいろ派手だ。僕とは正反対。


「ちょっとアンタ! 華の乙女がなんて格好してるの!」

「え? この人超イケメンなのにおねぇ? ウケる! てか、華の乙女なんて初めて言われたし。それで? ウチらと遊ぶの? 遊ばないの?」

「これから帰るところなの。ごめんなさいね」

「そうなんだ。じゃあねー」



「ほら、私たちも行くわよ」

 そう言っておねぇが歩き始める


 そして僕は家の前まで来た。鍵を開けて中に入る。

 後ろからおねぇも入ってくる。

 僕はドアが閉まったのを確認してから僕は口を開く。


「僕と出かける時におねぇ口調になるのやめてくれない? 

「何言ってるんだ。お前に変なやつが寄り付かないか心配なんだよ。可愛いなんだから。それにお前も人のこと言えないだろ。『僕』って言ったり、ズボンばっかり履いたりしてるから男と間違われるんだよ」

「おねぇ口調の人に言われたくないね」


 それにしてもお兄ちゃんは気づいているのだろうか。

 今日出会った女性は全員お兄ちゃんに話しかけていたことに。

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僕の隣にはおねぇがいる タマゴあたま @Tamago-atama

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