ひつじのいのち

たっくんスペシャル

第1話

私は横になる。枕をつかんで横になる。

縞の服、格子のパンツを履いて横になる。


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「ひつじのネリー、山形へ行く」

「ひつじのネリー、東京へ行く」

「ひつじのネリー、富士山へ行く」

わたしは永山みるく。「ひつじのネリー、日本百名山を登る」ブログのブロガーで、ぬいぐるみのネリーと登山することでいいねを集めてきました。山形の月山、東京の雲取山、富士山のほかにも谷川岳や石鎚山にも登ってブログを書いています。

最近は全方位見られるカメラをぬいぐるみのネリーに取り付けて動画も作っている。

ネリーはふわふわでちょっと大きいひつじの男の子。

リュックからネリーの頭を出すスタイルで写真を撮ることで、旅するぬいぐるみとして斬新な登山スタイルを確立し、さらにネリーの愛くるしい顔で有名になりました。

いよいよぬいぐるみがわたしより稼ぐようになり、嬉しいやら悔しいやら。


この見た目、白いちぢれ毛に白いフェイス、ふわふわでまるで我が子のように愛くるしいったら。

そう思って、ひつじのぬいぐるみと趣味の登山をしているんです。

しかも、ぬいぐるみなので山頂で抱えると心なしか暖かい。


ただの登山ブログも、ぬいぐるみブログも、動画投稿、いずれも撃沈。

なかなか閲覧者も少なく、トライ&エラーして行き着いた先がぬいぐるみと登山のハイブリッド。

最初はなかなか伸びないし、ぬいぐるみとはいえペットボトル一本ほどの重さをリュックに入れて運ぶのは大変だった。

雨に濡れれば重くもなるし、泥が跳ねるとクリーニングしないといけない、なんといっても他の登山客に笑われる。辛かった。長かった。お金がかかった。

そしていよいよフォロワーも十万人を超えた。


勝てる見込みは十分あったのです。

なぜなら、ネリーの愛嬌のある顔、抱き心地に心を奪われるだろうと。

おっ、企業案件だ。もっとふわふわ感を出すために綿を詰めないと。


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私はネリー。ぬいぐるみタレントです。

私を見てかわいいと言ってくれてありがとう。


みるく先生に会う前には、雑多な服やアンティークなオーディオを横目に、友だちの牛のカイルと遊んでいたよ。

私たちを売りにくる奴らの冷やかしの目がいやらしくて。

隣のゲームソフトを嬉々として見る子は私を叩いて去っていく。叩かれる筋合いなんてない。


みるく先生は少し黒っぽくなった私を抱えて、家に連れて帰ってくれました。山だけではなく、海にも行ってたくさん写真を撮ってくれましたね。

ほおづえのポーズもしたし生まれて初めて箸を握らせてくれました。

最初は触られるのも嫌だったけど、ここにいるよりはマシかもなと。

まさかこんなことになるとはね。タレントになるなんて思いもしなかった。

さて、私はもっと痩せたい。スリムになったら、先生の負担も減るだろう。だから今もこれからも断食生活頑張ります!

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