第1話
この世界では神を宿し誰もがその力を使うことができる。
たとえば火を生成して料理をすることだってできるし、空を飛ぶこともできる。
こんな世界だからかつての社会を作り上げてきた「科学」は衰退していき、今ではなんの役にも立たないものとなっていた。この世界にあるもの全ては“神力”によって作り上げられている。
この教室にあるものもそう。黒板にチョーク、担任のかつらだってそうだ。
要は科学でも錬金術でもないどちらかというと魔法に近いような万能力のことである。
しかしその力は誰もが平等に与えられるわけではない。
中には神力の力が特別強い者もいてそういうやつらは15歳になると軍に召集される。
俺もその中の一人だ。
初めは理不尽だとも思ったけど軍に入れば生活の心配はしなくていいし憲兵にでもなれたら貴族のような生活が送れるらしいんだ。
とにかく今は明日からの生活が楽しみでたまらない。なんてったって俺は明日から憲兵隊配属になるのだから。
キーンコーンカーンコーン
ホームルームが終わると担任に呼び出された。
「お前明日からの配属…」
はい、憲兵ですよね。
「PRTCに決まったわ。」
ん?
「えっと…憲兵隊志願で提出したんですが。」
「PRTC隊長たっての希望だ。」
ふざけるな。俺は今まで何のために頑張ってきたというのだ。ここで不本意だがPRTCの説明をしよう。プロトコア通称PRTCとは政府から独立した部隊で街に出現した死神の討伐を任務としている。だから任務の割に、生活がいいとは言えない。
「それでは俺の意思はどうなるんですか。」「もう決まったことだ。PRTCでも頑張れよ。」
担任は俺の肩をポンとたたいて立ち去った。
なんでだーーーーーーーーーこんなことがあっていいのか。頭の中が怒りで満たされて体温が上昇していくのが分かった。もう我慢がならない。こうなったら…「直訴だ。」それから自分の感情に任せてPRTC本部に向かった。
PRTC本部に着くと司令室というところに案内された。
予約なんて一切していないのだがこの際本部に入れればそれでいい。赤いカーペットがひかれた長い廊下を歩いていく。右側には薄暗い景色を映した窓と明かりの灯ったランプが、左側は木造のごつそうな扉がいくつも並んでいた。同じ景色が永遠と続く気がした。自分の足音に飽きてため息を3回くらいついたところで両開きの大きな扉に突き当たった。「司令室」ここだ。
明日の午前6時15分
新隊員の入隊式が開かれた。一人の男を前に起立した10人の隊員が敬礼をしている。
「新隊員諸君、ようこそプロトコア(PRTC)へ。」
どうしてこうなったのか説明させてくれ。俺は直訴しに行った司令室で圧力に負けて入隊したわけでも、何かにつられて入隊したわけでもない。決して違う。ああ、けっしてだ。
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