第2話 ごっちんこ

 トントンとドアが叩かれ「カズオさーん。入りますよ、おはようー!」と声がかかり、ドアが開いた。

「ああ……」

 いつものように気のない返事を返す。


「はあい。それじゃあね、お熱と血圧を測らせてくださいね」

 いつものにこやかな笑顔を見せながら、看護婦がベッド脇に立つ。

「はい。68の121ですね、いいですよ。お熱は……と、あら? 六度六分だわ。どれどれ、ごっちんこで測りましょうね」

 と、おでことおでこを合わせてのごっちんこをする。


 平熱であるにも関わらずのごっちんこだ。そしてこの毎朝のごっちんこが、穏やかな気持ちへと導いていくのだ。

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