第11話 視線

死刑囚はゆっくりと大きく吐き出し、煙の行方を目で追った。

そして死刑囚の目に映ったものは。


社会機構の中で身動きできない世界が、あたかも煙を吐き出すように死刑囚の人生を変えてしまった。


毒々しい煙に焚き付けられて、いつの間にか時間の暴力に飲み込まれていた。

その飲み込まれた世界は、誰も居ない浜辺だった。


薄気味悪い灰黒色の雲に覆われた浜辺で、ネイビーブルーの海をたった一人で泳いでいる死刑囚を、誰かが虚ろな目で見ている。


「誰だ、お前は!」

視線に気付いた死刑囚が問いかける。


「It's me!」

声が返ってきた。

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