その肆・表 『水底の呼び声』

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 その肆・表


 『水底の呼び声』



 説話


  雨の日の夕暮れ時、遅くま

 で運動施設に残っていると、

 どこからともなく声が聴こえ

 てくる。

  まだ誰か残っているのかと

 辺りを探すと、声は先程まで

 自分がいた屋内プールのほう

 から聞こえてくる。

  しかも、声は助けを求めて

 いる様子だった。

  電灯の落とされたプールを

 探していると、水の中からゴ

 ム手袋のような水分を含んで

 ふやけた手が伸びてきて、水

 の中へと引き摺り込まれた。



 要因


  屋内プールが出来たばかり

 の頃。

  カップルが夜の学校へと忍

 び込んだ。

  二人は真新しいプールでは

 しゃいで遊んでいたが、途中

 で彼女の足がつって溺れてし

 まった。

  しかし彼氏は、溺れた彼女

 を助けはせず、怖くなって逃

 げ出してしまった。

  彼女の助けを求める叫びは、

 雨の音に掻き消され、水の底

 へと沈んでいった。



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