ブルーの住人 第4章 ブルー・まーだらー

としひろ

第1話 朝

これは、昭和の御代、40年代の話だということを、先ずもってお知らせしておきたい。


それは、快い朝の目覚めだった。

昨日の朝のことが、まったく嘘のようにさえ思える。

これ程にも土地柄の違いというものが、人間に影響を与えるのであろうか。

今にして街での空しさを知り、また街での処し方がいかに難しいかを知った。

それは次に来るべき明日の予測を誤った者が味わう、

惨めすぎる程の挫折-仮に想像の域を脱しないものだとしても-が、多大な不安を与える。


真っ青な空に、二つ三つの白い雲。その間をぬって風は流れ、その風の流れに雀も飛び交う。

今、畑のあぜ道を、鍬をかついで歩く腰の曲がった老人がいる。

春にはれんげ草が咲き乱れ、多くの子どもたちがそこに寝転び、蝶々と戯れるのだろうか。

しかし今は、老人が歩いている。

十年前の自分に戻りたいとは思わない。

しかしもう一度、故郷のれんげ草のにほいを嗅ぎたいとは思う、自分だ。

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