第6話 真っ赤

少年の目は、二人に移った。

 が、そこにはもう二人の姿はなく、背の高いがっしりとした男が一人、踊り狂っていた。


 慌てた少年は、キョロキョロと見回した。と、少年の肩をポン! と叩く者があり、と共にプーンと甘い香りが少年を包んだ。


「また来たの? 坊や」

「あ、いえ。…あの、……いえ…」

 しどろもどろに答える少年だ。


「フフフ……、いつまでも子供ね。コーラなんか飲んで、純情でかわいいわ」 

 耳元で囁き、体をすり寄せてくるその女に、少年は弾かれるように身を引いた。そして、しげしげと女を見つめた。


 薄茶色に染められた髪を二つに分け、後ろで一本に束ねている。描かれた眉毛は細く、半円のように滑らかだった。


 その下の瞳には、ブルーのコンタクトレンズが入っている。つけ睫毛がとても長く、スラリと伸びた鼻と呼応して、エキゾチックさを醸し出している。


 その唇は、真っ赤に塗りたくられている。そのくせ能面のように無表情だ。

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