第2話 洪水

 少年が扉を押す。

 長身のボーイが、恭しく腰を屈めて迎え入れる。

 紅いビーロード地の幕をくぐり抜けると、まったくの別世界が現れる。青・赤・橙・紫……と、色の倒錯、交錯。

 そこでは、色の洪水だった。天井といわず壁といわず、その色はあらゆる物にしみ込んでいた。


 そして、爆裂音。

 あらゆるコミニュケーションを拒否するが如くに、それぞれの楽器がその存在感を主張する。

 ホールへと歩を進めると、数十人の若い男女達が焦点の合わない視線をお互いに向けている。しかしその瞳に彼らは居ない。その陶酔しきった目は、何を見ている? 


 体をエビのように折り曲げて、右手が上に行けば右膝が上に上がる。左手がだらしなく下に折れ曲がり、左足は床に着く。

 また体をエビのように折り曲げて、左手が上に行けば左膝が上に上がる。

右手がだらしなく下に折れ曲がり、右足は床に着く。


 単調な繰り返しが、リズムに合わせて続く。

 ♪ゴーゴー♪ と言われる踊りだ。

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