第8話 捜索

 おなかの必死の捜索が始まりました。まずは森の中に入りました。木の実を食べて、生きながらえているに違いないと思ったのです。うっそうとした森の中を、日が上がるとともに歩き回りました。

 大声で、男を呼びます。

「あんたあ、あんたあ! あいが、わるかったよお! 出てきておくれよお!」

 と、呼び続けます。


 しかし答える声はなく、その木々の間に吸い込まれていきます。二日三日と経ち、四日目からは村人総出の探索なりました。

「洞窟じゃないか?」

 という声が上がり、おなかがすぐに駆け出しました。たき火の跡がありました。確かに居たようです。しかし男の姿は、すでにありませんでした。がっくりと肩を落として帰るおなかに、村人たちが声をかけていきます。


 皆口々に、「すまなんだ、かわいそうなことをした」と言います。まるで男の死亡を告げるがごとくにです。

 しかしおなかは「死んどりゃせん! 生きとる、そうに決まっとる!」と、村人たちの手を振り払いました。


 どっぷりと日の暮れた道を歩くおなかの目に、煌々と灯りの点いた我が家が目に入りました。あれは、まごう事なき我が家です。藁葺きの屋根と、庭の隅には痩せこけた柿の木があります。

「あんた、あんた、だよね……」

 と、脱兎のごとくに駆け込むおなかです。そして土間で藁を打っている男を見つけて、へなへなと座り込んでしまいました。

「お帰り、おなか」

 笑顔で迎えてくれた男に、「あんた、ごめんよ。ごめんよ、あんた」と、泣きじゃくるおなかでした。

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