第4話 大義名分

 老婆の家の修復は見送られました。ひとり寝の状態では、いつ何(なん)時(どき)にみまかることになるやもしれません。そのような人でなしなことはできぬと、村人の間で大論争が起きたのです。と言いましても、賛否の議論が起きたと言うことではなく、どうやって老婆の面倒をみるかという方法論でもめたのでございます。


 結局のところ、他人を交えての食事を禁じた風習が、この老婆に関しては破られることになったのです。

「お婆さんは、村全体の身内じゃから」というのが、その大義名分でした。

 こう申してはなんですが、実のところ、村人たちは老婆を歓待しているのではないのです。老婆にまつわる噂で、歓待しているのです。ですが信憑性のある噂ではありません。むしろ眉唾物と考えた方が、良さそうです。


 いつからその噂が広まったのか、分かりません。誰が言い出したのか、それすら定かではありません。しかし確かなことは、半信半疑ながらも村人全てが、この噂を信じていることです。


 がしかし、一割でも二割でもそれが真実のことなら……。

 あなたならどうします? 

 噂だからと打ち捨てられますか?

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