カ壱號、出動せよ
中崎実
帝都あやうし
いや、回転式拳銃しか持たぬ彼らに、手出しする
「ふむ、あれを一台、何とかして土産にしたいものだな。そう思わないかね、相田専務」
「この非常時に冗談をおっしゃらないで下さい、社長」
目の前の機械人間から目を離さず、相田は言った。
身の丈
「いや、冗談ではないのだよ。あれが今現在、我々にしている
「わたしとしては、その素晴らしい性能を味わわずに済む方法を考えたいのですが」
相田の声はすっかり呆れ返っている。
無理もない。この場にいる他の人々は、銃を突きつけられて立ちすくんだり、座り込んだりしてしまっているのである。のっぺりとした
それが、この小男の社長ときたら、
とはいえ、腰を抜かすどころかまるきり平常心で社長の言葉に呆れ返っている相田も、肝が太いと言えば太い。
「ああ、あれの
「社長、技術の話はあとにして下さいませんか」
相手はどうやら、今のところこちらを傷つける気はないようである。相田はゆっくりと川口社長を振り返り、そう意見を
川口は自分より一尺あまり背の高い、若い重役を見上げ、
「相田君、どうせ我々、大したことはできやせんのだ。ならばせっかくの機会だ、じっくり
この時点で、相田は技術者出身の社長を止める気をすっかり失った。
ただし、機械人間に近寄らせるようなことだけはなんとしても止める。放っておけば、川口は機械人間をばらばらにしたいと言い出しかねない。そうなったときにはたして、機械人間がどのような反応をするか、相田としてはあまり考えたくもない。
そして機械人間の動向を気に病んでいるのは、表の警官隊を指揮する
下手に動けば、あの巨大な銃が、人質を
包囲網は完成したものの、接近すれば機械人間の巨銃が火を噴く。すでに二人の警官が負傷しており、大塚警部は親指の爪をかじって深刻な表情だった。
「誰か、通用口に回っているのか」
「は、しかしそちらにも機械人間が」
報告したのは、木村
「やつら一体、なにが狙いなのでしょう」
警察車のそばに立っていた、
「俺に聞かないでくれ、木崎」
大塚は爪をかじるのを中断し、若い部下をじろっと睨んだ。
「それよりも問題は、どうやって人質を救出……」
そこで、大塚の声がとぎれた。
猛然と突進してきて急ブレーキをかけた、一台の
大塚が何か言うより早く、二台の
軍用車からは陸軍少佐の軍服を着た青年が一人と、
「おい、そこの軍人、馬鹿な真似はやめろ!」
大塚が飛び出し、少佐の肩を
が、その瞬間。
少佐は腰の銃を抜き、
陸軍少佐は足をゆるめぬまま、ぐっと体をたわめ、次の瞬間にはその体は空中にあった。警官隊からほうっと
着地すると同時に、少佐の銃が必殺の一撃を一体の機械人間に放った。機械人間は
「よせ、中には民間人がいるのだぞ!」
大塚警部が怒鳴るが、時すでに遅し。少佐は黒い塊を無造作に、二階の窓から投げ込み、自らは張り出しから地面へ飛び下りる。
警官達は思わず目を
「ロボットどもはこちらで始末する」
大塚に真っ向から
「ロボット?」
「機械人間とでも言えばいいのかな。とにかく、あれだ。
警察はあれには構わなくていい。人質になっていた人達の面倒を見てくれ」
と、地面に落ちている機械人間を指さし、言った。
硬い感じのする、低い声だ。大塚警部はその
「言われんでも、我々は民間人の救出を優先する。それより少佐、あんたの所属と名前をうかがっておきたいのだがね」
「帝国陸軍の横田少佐だ」
とりつくしまもない、
「警部、なんなんですかね、あの少佐」
木崎警部補が、大塚警部に報告にやってきて、いった。
「うさんくさい奴だな」
大塚警部は、作業を終えて帰っていく軍人達を
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