第19話「悪友は今日も元気に暴走中」

「孝也聞け」

「聞いたぞ今の一言だけな。よし、去れ。俺は教室ではぐっすり休みたい。神谷の相手で疲れてるんだよ」

 近寄って来た吉崎を一蹴しようとしたら、吉崎は迷惑な事に即座に反論してきた。


「うるせーよ。お前さっき、風紀委員長といちゃこらしてただろうがKKMの件があるから安心してたら、抜け目ねー奴だな」

「うるさいな。風紀委員長なんだから学校でのもめ事に出てくるのは当たり前だろうが。大体俺はあの人には感謝の気持ちしかないし、本当、色々助けられてるんだよ。それにあんだけ愛嬌あればもっといい男捕まえれるだろうし」


 裏ミスコン、ノミネートでペットにしたい女の子部門に輝く第一位のちづる先輩である。あの癒し効果抜群の笑顔にとりこになっている男子多数だ。

 俺のような平凡な男が特別好かれる要素もないし、身の程は弁えているつもりだ。

 正直、仲良くしてもらえるだけで十分だ。


「なんか余裕を感じるようでむかつく台詞じゃねえか」

「いってろよ。というかそういうお前はどうなんだよ?」

 人の事をあれこれいってられる程の余裕が吉崎にあるのかと言いたい。


 吉崎は渋い顔になり、この前みせたメモを見せてくる。そこにはメールアプリのアカウントを交換した二人に×の印がされていた。


「中々、俺の魅力を分かる女がいなくてよ」

 吉崎はやれやれと首をふるが、俺からしたらお前がやれやれなんだがな。このメモを初めて見せた時の威勢はどうしたといいたい。


「ちなみにどうやってアプローチしたんだ?」


「えー、いやな、速攻告白してだ、前の彼氏が二股してて別れた事を理解しているから、俺はお前一筋でよそ見しない。彼氏の家に手料理もっていったら、浮気相手とラブラブでしたみたいな展開は絶対ないからっていったら、マジ怒りしだしてよ、わけ分かんなかったわ」

「……うん、そうか。他はどうした?」


「ああ。他の娘ではお前が隠れオタなのはしっている。俺はお前の全てを受け止めれる男だ。たとえ、お前がこの前の同人即売会で BL本をブランド旅行鞄一杯に購入して、その日、徹夜で読み切ったとしても、俺は何も変わらないぜっていったのに、殴りかかってきやがってさ」

「…………そうか」


 吉崎、お前はやはり期待を裏切らないというか。一体どこでそんな情報を仕入れてくるのかと改めて驚いてやればいいのか、情報を活かす為の提案力のなさをつっこんだらいいのか、俺には分からないよ。

 的確に表現する言葉はやはりこれしか思い浮かばないな、うん、いってやろう。


「お前、本当に馬鹿だな」

「喧嘩売ってんのか、テメー!」

 きりきりと俺と吉崎はにらみ合う。


 そんな俺達の険悪な空気を気にせず馬鹿が一人、スマホを持って近寄ってくる


「樋口―、吉崎―、見てよ、これこの前、彼女と撮ったプリクラ、よく撮れてるっしょ。俺の彼女かわいくね?」

「「うるさい、邪魔だ、死ね」」

 同時に横沢にかみつく俺と吉崎。


「うわー、そんなユニゾンしていわなくてもさ。なんだよ彼女いなくて二人ともさみしそうだから、幸せのお裾わけしてやろうと思ったんじゃんかねー」

「悪いな吉崎。本当の馬鹿はここにいたわ」


「人の気持ちって奴をこいつには体で味あわせなくちゃいけねーな……」

 いやいや、吉崎お前もしっかり人の気持ちって奴は理解しなくちゃいけないだろう。


 横沢をしとめる為、立ち上がったと同時にスマホに着信があった。


『ちづる先輩:神谷さんKKM遭遇情報☆』


 俺はため息を吐き出し、メールアプリを開いた。

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