お茶ください

はぁ、どうして僕は対人恐怖症なのだろう。

でも、もう我慢の限界だ。

勇気を振り絞って言うしかない。

「すみません」

「はい、なんでしょう?」

「あの…私ごときがあなた様にこのようなことをお伺いするのは大変はばかられると申しますか、なんと申しますか、私のような下賤げせんな身でありながら身分もわきまえずやって来ておそれ多くもこのようなことをあなた様に申し上げて貴重な時間を頂き、わざらわせてしまうことは大変心苦しく、いっそこの場で私は首をくくってしまおうかと思うほどでございますが、一言だけ、申し上げてもよろしいでしょうか?」

「は、はい。…なんでございましょう?」

店員さんはすごく青ざめてしまった。

「あの」

「はい…」

ゴクリと生唾を飲み込む音。

僕は塩辛い料理を食べてもう限界なのだ。

「…お茶、ください」

「え?」

「お茶…」

「かしこまりました!」

あああ、やっとお茶が飲める!

今年一年分の勇気、使い果たしたああー!

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