用心棒

腕利きの用心棒がいるという噂を耳にして、商人は旅の途中にその男を雇った。

精悍せいかんたくましい男であった。心強い。

山深い隘路あいろを進んでいると、果たして山賊どもが現れた。

「先生、お願いします!」

商人が声をかけると、用心棒はにっこり笑って山賊の親分の前に進みでた。

「どうぞ何もかも持っていってくだせえ」

「話がわかるじゃねえか!」

山賊の親分は大笑いし、本当に何もかも持っていってしまった。

商人は腹の虫が治まらない。

「まあまあ、こっからが本番よ」

用心棒は不敵な笑みを浮かべると、こっそりと山賊の後を追い、隠れ家の洞穴ほらあなを突き止めた。

そうして大木を切り倒して出口を塞ぐと、火を焚き、中の山賊をいぶして皆殺しにした。

後から洞穴ほらあなを探ると、これまで山賊が略奪してきた財宝も出てきた。

「物は取り戻したぜ。おまけに金銀財宝もある。まだ不満があるかね?」

「ととんでもございません!」

商人はひれ伏して詫びた。

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