東京大学二次試験 国語

1、次の文章を読んで後の問いに答えよ。


 こけむす幽寂ゆうじゃくな山寺に、朴直ぼくちょくな若い僧が居た。

 修行のために、長久ちょうきゅうの歳月に黒ずむ床板に座禅を組むこと小半時。枯淡清明こたんせいみょうたる石庭からは、無風の静けさだけが深く漂っていた。そこへ、萌え萌え猫耳少女が、ぴょこにゃん、と迷い込んできた。

「ねぇ、にいにい、私帰る家がないの。だから、私のご主人様になってなのにゃ」

 僧は静やかな顔で、これを無視した。

「まいっか。にいにいの膝の上、あったかいにゃあ。幸せにゃあ」

 猫耳少女は、僧の膝の上に、あられもなく身を差し出し、ぷにぷにほっぺを僧の内ももにすりすり。

 僧は眉をぴくつかせ、ぐっと何かを堪えた。

「ねぇ、にいにい、いいかげん起きてってばぁ。ねぇ、早く私とニャンニャンしよ?」

 僧は、歯を食いしばり、激しく苦悶の表情を浮かべた。



<問一>

僧が苦悶の表情を浮かべたのはなぜか。百字以内で説明せよ。

(十五点)

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