井戸の底で出会った女の人

くそっ、どうやったらこの穴から出られるんだ!

「誰かー!誰かあー!」

返事はない。

まさかこんな古井戸に落ちてしまうなんて。

このまま助けがこなかったら…。

妙な気配がして振り返ると、白い着物姿の女が立っていた。長い髪に覆われて顔が見えない。

「わ!なんですか、あなた」

「私も今から井戸を出るんですけど、一緒に行きます?」

「え、いいんですか?」

「じゃあ、どうぞついてきてください」

へえ、この井戸よじ登れるのか。

どうもコツがあるみたい。

よし、登れた!

ん?

急に周囲にノイズが…。

あれ、ここは誰かの家の茶の間?

テレビ画面から自分の体が半分出てるぞ??

「いやああ!」

誰かの絶叫がした。

白い着物姿の女は振り返った。

「あ、いま仕事中なんで、どうぞお先に…」

「はあ、じゃあ失礼します。ありがとうございました…」

茶の間の住人がもがき苦しんでいる姿が見える。

一体何の仕事なのだろう…。

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