1分で読める400字ショートショート傑作選
水素カフェ
この中にお医者様はいらっしゃいませんか
あるジャンボジェットの機内で突然一人の客が倒れた。
客室乗務員がすぐに駆け寄り、声をかけてみるが反応はない。
「どなたか、この中にお医者様はいらっしゃいませんか?」
声をかけたが、他の客は誰も応答しなかった。
ヘッドホンを付けて映画鑑賞をしていたり、談笑していたりと、まるで事態に気づいていない乗客もいる。
早く対処しないと、この人の命が危ないかもしれない——。
そう思ったとき、近くの席に座っていた一人の紳士が立ち上がった。
「ここは、私に任せなさい!」
彼はすぐにジャケットを脱ぎ、ワイシャツを腕まくりする。
それから鉢巻きを頭に付けて、メガホンを持った。
「この中にお医者様はいっらしゃいませんかあああ!」
彼は腹の底から大声で叫ぶ。
「こちらに急病で倒れた方がいます! お医者様はいらっしゃいませんかあああああ!」
人差し指を天にかざし、声に魂を込めた。
「期間限定、あとお一人様だけ!」
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録(無料)
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます