第三章
第22話
通常速度で航行を続けること三時間。何事もなく進んでいたが突如、船の動きが止まった。大きな衝撃の後に停止した船は再び動きはじめる。ラウンジにいた俺たちは急いで操縦室へと向かった。何が起こったのか。俺は混乱する。
「何があったんだ? 」
操縦室へとたどり着くとセイジがレイに尋ねた。レイは急いで計器を確かめる。レイの顔は焦りと恐怖に満ちている。俺とセイジも表情が曇っていく。
「…… 制御不能になってる。誰かの船のトラクタービームに捕まったらしい」
「なんだって! 」
俺は思わず声を上げた。セイジもパニックになっているようだ。船は尚も制御が効かない。すると、前方に俺たちの船よりもさらに大きな船が見えてきた。俺たちの船との距離は徐々に近づいていく。俺たちの船はこの大型船に牽引されているらしい。
「海賊かもしれない」
レイが怯えながら呟いた。まさか、エドが言っていた海賊というものに出会したのだろうか。この状況を鑑みるに本当に会ってしまったのかもしれないと俺は思った。船内にさらなる緊張が走る。
「どうすんだよ! 」
俺はレイにどうすればいいのか聞いた。レイは動揺しながらも、
「とりあえず、向こうとコンタクトを取ってみよう」
と返した。レイは急いで船の通信装置を動かそうとする。幸い、通信装置は作動したので、向こうとの連絡を試みた。
「こちらランナウェイ号、応答してください。どうぞ」
『 …… 』
少し待ってみたが向こうからの反応は無い。レイは間を置いて再び通信を試みたが応答はなかった。距離はさっきよりもより近づいている。緊迫の中、俺たちにはもうどうすることもできなかった。次第に俺たちの船は大型船の中のドッグへと入っていく。仕方なくレイは着陸脚を出した。俺たちは船が完全に止まるのを待つことにした。いや、正しくはそうすることしかできなかった。
程なくして、船が完全に止まった。俺の中に恐怖の感情が走った。その直後船の出入口が開いた。向こうの誰かが操作スイッチを操作したらしい。
「おら! 行くぞお前ら! 」
「おお! 」
直後、船内の向こうから甲高い男たちの声が響いた。船内を物色する音が聞こえる。どうやらこの大型船は本当に海賊たちの船だった。俺たちは命の危険を感じて、隠れることにした。できるだけ声を上げずに隠れ場所を探す。だが、遅かった。
「おっと、お前ら。そこまでだ」
海賊のメンバーに見つかってしまった。俺たちは反対の方へ逃げようとしたが、そっちにも海賊がやってきて俺たちの腹を殴ってきた。
「うえっ! 」
俺とレイとセイジは一瞬のうちにその場で倒れ込んだ。
「元気がいいなお前ら。高く売れそうだ」
そう海賊が言うと、そいつは俺にスタンガンか何かを向けた。俺の意識はそこで途絶えた。
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