第20話

 俺がある程度泣き止んだところで、エドは話を再びはじめた。


「今、この旅に意味を見出せなかったとしても、いつかその意味に気がつく日が来るのだよ。それが人生って物だ」


「どうして、そう断言できるのですか? 」


 俺は思わず訊き返してしまった。それでも、エドはさっきまでと変わらぬ顔で話を続ける。


「言ったじゃないか。私だって旅をした。理由を言葉にできずに旅を続けていたらある時遂に気づいたんだよ。自分が旅をしている意味を、そして、自分が大事だと思えるモノを」


「その大事なモノってなんですか? 」


「それは、自分でいつかわかる」


 この時エドは肝心な答えを俺に教えてはくれなかった。なぜ教えてくれないのかと訊くと、その答えは他人に言われても実感が湧かないだろうから今は教えない、と彼に返されてしまった。それでも、俺は数分前よりも気が軽くなっていく感覚があった。この紳士は俺のことをしっかりと見てくれていたのかもしれない。そう思うと心が少しだけ救われた。



 エドの屋敷に戻ったあと、俺たち三人は今後のことを決める方針会議を行うことにした。机に地図やデバイスを広げて、特に必要ではなかったが準備を念入りに整える。三人がそれぞれのイスに座ったところで会議は始まった。俺から今回の議題を切り出す。俺にはある一つの結論が出ていた。


「…… この二日間で俺思ったことがあるんだよ。まだ、自分が旅に出た理由をみつけられてない。そう思ったら、見つけるまでは旅を続けたいと思った。…… 理由にはなってないかもしれない、でもそれを探すために旅をしたい。…… ダメかな? 」


 俺は恐る恐る提案をする。ダメと言われるかもしれないと思っていたが、意外なことにすぐにセイジが、


「いいぜ。俺もまだいろいろな星を見に行きたいし」


 と言ってくれた。それに続けてレイも


「僕もそうだし、まだ旅を続けようよ」


 と思っていたよりも明るく返してくれた。今度は二人に心を助けられた気がする。

俺たちは全会一致で旅を続けることにした。



「そうか。じゃあ、船を改造しないとな」


 会議のあと、俺たちがここを出て旅を続けることを告げると、エドはこう返した。


「どうしてですか? 」


 レイがエドに尋ねる。すると彼はこの周辺の領域は進む航路によっては、海賊などがいて危険だと告げた。だから襲われた時のために船に自衛のための装備を付けた方が良いと助言を受け、俺たちは迷わず彼に自衛用の装備の取り付けを彼に頼んだ。


 船の改造には四日を要した。その間、俺たちはニューロンドンの散策をして時間を潰し、誰に渡すでもないお土産などを買い漁った。エドは船にどれだけの装備を積んだのかは俺には全てを把握できなかった。レイでさえ、全てを確認できたか怪しい。こうしているうちにエドとアルフレッドに別れを告げる時が来た。

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