第17話

 車を走らせはじめて一時間が経過した。エドが連れていきたいという場所まではもう一時間はかかると車のナビシステムが教えてくれたので、俺たちはエドとまた話をすることにした。


「エドの屋敷って元々誰の家だったんですか? 」


 セイジが一つ疑問を尋ねた。エドはこれまでと変わらない様子で、


「あれは、私の祖父が建てたものだ。そろそろ築五十年は経つかな」


 と返したが、


「これまでどんな発明をしたんですか? 」


 そこにすかさずレイが新たに質問をした。俺はよくわからなかったが彼はレイの質問にもしっかりとした答えを出してくれたのでレイは納得しているようだった。


「ワタルはエドに聞きたいことあるか? 」


「ああ、そうだ、そうだ」


 セイジが俺に話を振ってきた。レイも相槌を入れている。俺は少しだけ考えた末に一つ気になったことがあった。


「昨日、“君たちのような子を大勢見てきた“と言っていましたけど、どういうことですか? 」


 俺が聞いたあと、エドの表情が少しだけ変わった気がした。さっきまでとは車内の空気が違う。


「私は若い頃、金にモノを言わせて旅をしたんだ。まだ人の手が及んでない星とか、衛星とかにな。目的はロマンを追い求めるためで、その時に多勢の同志たちと出会った。彼らと交流が深くなっていくうちに彼らの昔も知るようになった。すると、中には家出したからずっと旅をしているという連中がいたりしたものだ。仲間にアリスという女船長がいるのだが、彼女なんかもそうで…… 」


 話はそこからさらに続いた。エドが若かった頃、ティーンエイジャーが家出した末に旅人か海賊になることが続出したそうだった。エドは高校生三人きりで離れた星からやってきた時点で家出の類だと気がついていたそうだ。気がつくと俺はエドの観察力に思わず感銘を受けていた。


「ロマンってどういうことですか? 」


 話が一区切りしたところでレイがまた質問した。エドは屋敷から持ってきた水を一口飲んでから話をしてくれた。


「私の場合は人間がまだ発見できていない資源を自分の手で見つけることだった。私は途中で諦めてしまったが、同志たちや海賊は今も探し続けている。私は惑星アマゾネスに新しい資源があること自体はつきとめたが、実際に現物を手にすることまではできなかった。懐かしい」


 最後の一言には言葉通りの意味や悔しさ、諦めなどのいろいろな含みがあるように俺は感じられた。エドの本質が知れた気がした。目的地まではさらにあった。今の会話でも三十分程しか時間が経っていなかった。しばらく俺たちは何も喋らなかったが、そうしているうちにまた三十分ほどが経ち、遂に目的地へと到着した。


「さあ、着いたぞ」


 エドはそういうと、ドアを開けて外へと出た。俺たちも続いて外へと出た。ここはどこなのだろうか。少し冷たい空気が体に当たって寒かった。

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