第13話
「待って! 」
俺たちは無我夢中でレイのデバイスを盗っていったドローンを追いかけたが、やはりドローンの速度には追いつけなかった。俺はもう諦めるしかないのかと思った、次の瞬間だった。
「君たち。後は任せろ」
俺たちの前方に1人の中年程の紳士が現れ、俺たちは足を止めざるえなかった。ドローンはどんどん遠くへと飛んでいく。
「おじさん、ちょっと! 」
「いいから、いいから」
そう言うと紳士は自分のデバイスを起動して、何やら操作をした。俺の目にふと見えたデバイスの表示には“Crack”の文字があった。
「ええと、これで良いかな。えいっ」
紳士がデバイスの操作を終えた瞬間、俺たちが追いかけていたドローンが突如墜落した。地面に落下したドローンに驚いた通行人たちが群れを成しはじめる。落下したことを確かめていた紳士は、ドローンの方へと歩きはじめた。俺たちはその後を追いかけることしかできずにいた。
紳士はドローンの側まで行くと、いくらか様子をみるような素振りをした。そして、レイのデバイスをドローンから離して、後を追っていた俺たちの方まで近づいて、俺にデバイスを手渡した。よくみてみると、デバイスは今の騒動で幾らか破損しているようだった。
「君たちが盗られたのはそれかい? 」
紳士は俺の手にあるデバイスを指差した。
「そうです。これです」
レイがデバイスを目で確かめて、紳士に返事をした。
「取り返せて良かったな」
「でも、いくらか壊れてる…… 」
紳士の言葉にレイが残念そうに返した。紳士は落ち着いた調子で、
「ああ、安心しろ。私が直してあげよう」
と約束してくれた。
「ありがとうございます」
レイはお礼を言った上でお辞儀をした。俺とセイジもそれに続いた。
「ところで、あなたは? 」
セイジが紳士に一つ質問をする。確かに、この紳士のような男性は何者なのだろうかと俺も改めて思いはじめた。
「ああ、そうだったな。自己紹介がまだだった。私はエドワード。エドと呼んでくれ。この近くでちょっとした発明家をしている。そういう君たちは? 」
どおりでドローンの操作を乗っ取れた訳だ、と俺は感心した。俺たちの方も自己紹介がまだだったので、三人それぞれの紹介と俺が代表して軽い挨拶をすることにした。
「セイジです」
「僕はレイ」
「ワタルです。この三人で、ニホンからやってきました。宿探しをしていた最中にああなってしまったんです。今回はありがとうございます」
「なるほど。宿探しをしていたのか。では、我が家に来ないか? 案内するよ。ついて来い」
「でも…… 」
「いいから、いいから」
そう言ってエドは俺たちに有無を言わせず案内を始めた。空を見ると、気つけば、空には月が綺麗に見えはじめていた。
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