第11話

 “イギリス”へのワープを開始してから三十分が過ぎ、幾らかの惑星や衛星を一瞬のうちに通過して、到着まであと十分程のところまで来ていた。俺たちはその間無言だったがあと十分というところでレイが声を出した。


「……、僕たちさ、何も考えずに飛び出したけど、この先どうしようか。どう考えてもいつかは戻らなきゃいけないでしょ」


 そうレイに言われた俺は少し戸惑った。少なくとも俺にはもう帰る場所などなくて、この言葉にどうやって返したらいいのか言葉に詰まる。セイジも表情から見るに悩んでいるらしかった。場の空気が重くなる。


 俺たちは行き先も目的もなく、ただ自分たちの世界に嫌気がさしたから飛び出しただけだった。この先どうやって生きていくかの当てもない。それでも、どうにかしなきゃいけないことだけは確かだった。


 そうしているうちに、目的地近くまで到達したことを告げるアラームが鳴った。レイがワープエンジンを停止させる。直後、俺たちの目の前に一つの星が見えてきた。“イギリス”である。俺たちは、この目で初めて他の星を見ることになった。その星は見るにとても豊かそうだった。


 俺たちの船は星の中へと突入していく。地上の街が次第に鮮明に目に写ってきて、俺はそれに目を奪われていた。その間にレイは下の街を見下ろしながら船を操縦し、セイジはデバイスで調べ物をしているらしかった。レイが停泊場を見つけて、適当な場所に船を着陸させた。窓の外には“ロンドン宇宙港”と書かれた大きなモニターが宙に浮いていて、周囲には大小様々な船が上空を行き交っている。船のエンジンを完全に停止させた後、俺たちはこの地で今からすることを決めることにした。


「で、ここで何をする? 」


 セイジが話を切り出した。俺は少し考えて、


「まずは宿を探さないか。話はそれからでも良いはずだ」


 と返した。すぐにセイジが同意の仕草をした。何かの作業をしていたレイも俺の考えに続いた。するとレイは俺とセイジにフックのついた五メートルくらいはあろうロープを渡してきて説明を始めた。


「この港には盗難防止の為にフックが地面に据え付けられているから、念のためにそのロープで船と地面のフックを繋いで盗まれないようにする。今からそれを繋ぐから手伝って」


 俺たちはフックを繋ぐために外に出ることにした。レイが出入り口を開け、新鮮な空気が入ってきた。今まで感じたことのない、新しい空気だった。初めて、他の星の地面を踏む。俺は少し感慨深くなって、不思議な気分になった。俺たちは手分けして着陸脚と地面のフックをロープで固定し、その上でレイが南京錠を取り付けて厳重な盗難対策を施した。


 船を固定し終え、一度船内に戻って、最低限の荷物を準備する。準備が整い、俺たちは船を降りた。レイがスロープを閉じたことを確認し俺たちはその場を離れ、宿探しをはじめた。


 時刻は午前を過ぎ、真昼の空に太陽が昇っていた。

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