銀河オーバードライブ (original version)
石嶋ユウ
プロローグ
第1話
全ての始まりは高校二年の秋だった。俺とレイとセイジの三人は紅葉で色付き始めた森の中、ある一隻の宇宙船を発見した。この森の中にある広大な草原にその船はまるで誰かの帰りを待っているかのように存在し、遠くから一見するとその船は大昔に海洋船に取り付けられていた錨という道具の様な形をしていた。
気がつくと俺たち三人はあの船に導かれるかの様に足を船に向けて歩いていた。なぜ、ここに宇宙船が置かれているのか。三人揃って考えることは同じだということだった。
「ワタル、あれは見るからにアクア社のアンカー級民用船だな。でも所々改造が施されているようにも見える」
船好きのレイが興奮した様子で俺に話をする。彼によると、あの船は二十年以上前にアクア社という有名な造船会社が主力製品にしていた物で船好きの間では愛好家が多いのだそうだ。
「で、なんでそんな物がここにあるんだ? 」
不思議そうにセイジがレイに尋ねた。俺もかなり不思議だった。なぜこんな誰も来ない田舎の森の中に一隻だけ宇宙船が置かれているのか。俺たち三人は納得の行く結論が出せなかった。
俺たちは船体の真下までたどり着いた。よく見ると船体のあちらこちらにサビができていて、だいぶ傷んでるようだった。つまり、この船は誰かが使わなくなったから不法投棄した物なのだろうと俺は考えた。
俺とセイジが船体を見回している一方で、レイは何かを探しているようだった。彼は隈なく船体を覗いている。
すると、何かを見つけたようで喜んだ表情を浮かべた後、手招きして俺とセイジを呼び出した。俺たちはレイの方へと着く。彼は船体に取り付けられている何かの装置類を指さした。
「見て。これで船内に入れる」
「入るって、おいマジか」
「これで何かあったらどうするんだ? 」
「良いから、良いから」
俺とセイジはレイを制止する。だが、それも虚しくレイは楽しげにスイッチを押した。そして、船は大きな装置が動く音を鳴らし、同時に煙を吐き出しながら、出入り用のスロープを展開した。
「お前ってやつは」
セイジが呆れたような顔をして一言呟いた。俺も心の中では同感だった。
こうなれば、中を隈なく見てみよう。俺とセイジはそう考えてレイの勢いに身を任せて船内へと入った。中に入ってすぐの通路を見ると内装は外側に比べて損傷や汚れらしきものは少なく、想定していたよりかは綺麗な状態だった。俺たちはまず、入ってすぐ正面に掛けてあった船内図を確認した。
「なるほど......、個室が四つに、ラウンジが二つ。操縦室と機関室がそれぞれ一つか」
「どうやって探索するんだ」
「三手に別れるのはどうだろうか? 」
俺たちはセイジの提案で三手に別れて探索を始めた。俺が個室四つを、レイが操縦室と機関室を、セイジがラウンジ二つを見ることにした。
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