スキルが全てを決める世界で、俺のスキルがビームだった件。ダークファンタジー世界をビームでぶち抜く。

あけちともあき

第1話 不明スキル:ビーム

「スキル判明……ビーム、だと……!?」


 禍々しく輝いたスキル判定装置に、俺のスキルの名前が映し出される。

 周囲にどよめきが走る。


「なんだそれ」


「聞いたこと無いぞ」


「司祭様、これは……」


「うむ」


 村の司祭が、難しい顔をして俺を見下ろしている。


「ユニークスキルかと思って期待したが……。未知のスキルとはな。前例がないということは、記録される価値もないスキルなのだろう。だが、何が起こるのか分からない以上、村のしきたりに従う他あるまい。村長」


「ああ。オービター」


 村長が俺に言う。


「お前は村を追放だ。わけの分からん、使い所の不明なスキルを持つ者を村に置いておくわけにはいかん」


「なん……だと……?」


 俺は、村長の三男である。

 ここは、成人の儀式の場。


 この世界、エンブリオでは、人は成人すると同時にスキルを鑑定される。

 そして持っているスキルに見合った仕事をするようになるのだ。


 大体の人間は、農夫とか、◯◯職人とか、料理とかそういうのだ。

 レアな連中は、魔法や剣術スキルを持っていたりもする。


 さらにさらにレアなのは、ユニークスキルという連中。

 こいつらは一様に魔王スキルと呼ばれている。

 彼らは帝都に集められ、専門の学園に入って教育を受け、世界の明日を背負って立つ人材になるのだそうだ。


 俺も村長の三男坊という立場なので、将来など無いのと同じだ。

 なので、スキル鑑定に一縷いちるの望みを掛けていたのだが……。


 ユニークスキルの中には、外れスキルというやつがある。

 教会の記録に無い、意味不明なスキルである。


 これは大抵、意味のわからない言葉で構成されている。

 一体どうやって使えばいいのか、効果も何もかも分からない。


 都会では、そういうスキルの持ち主は幽閉されてしまうそうだ。

 田舎では殺されたりもするという。


「親父、俺を追放するのか?」


「ああ。危険かもしれん男を、我が息子とは言え置いておくことはできん。村のしきたりだ。命だけは奪わないことを喜んでくれ」


「嬉しいものかよ! 役立たずのスキルだと言われて、しかも追放だぞ!?」


 周囲には、見知った顔の大人たちがやってくる。

 彼らは一様に怯えた顔をして、農業用のフォークを握りしめていた。


「オービター! 頼むぞ、大人しく出ていってくれ」


「わけのわからない奴を住ませておくほど、村には余裕がないんだ」


「大人しくしろよ、暴れたら突き刺すからな!」


「くっそ、なんだよこの扱いは! 俺は村長の三男で……」


「オービター!」


 親父が吠える。


「お前は今から、わしの息子でもなんでもない! どこへなりと消えろ!」


「マジかよ……!!」


「まさか、不明スキルの持ち主が、わしの息子から出てしまうとは……。だが、三男だったことが不幸中の幸いだった」


 俺にとっちゃ、幸いでもなんでもない。

 そして、背後では新たな一人がスキル鑑定を受けている。


 そいつは、俺の幼馴染の娘、アセリナだ。

 彼女は俺を心配そうに見ながら、スキル鑑定装置に手を伸ばす。


 すると、鑑定装置が眩く輝いた。


「おお!」


「これは!」


「魔王スキルだ! 魔王スキルの持ち主が出たぞ!!」


 アセリナが目を見開き、画面を見つめている。


「我が村から、ついに魔王スキルの持ち主が! なんと嬉しいことだ!」


 親父も、俺のことを忘れてしまったかのように喜ぶ。

 アセリナは俺に振り返ることはなかった。


 俺はフォークを持った村人たちに囲まれながら、村の入口まで追いやられる。


「二度と戻ってくるなよ!」


「ああ、恐ろしい。昨日まで、不明スキルを持ったやつと暮らしていたってのか」


「よくぞ無事でいられたもんだ……」


「都では、収容所に入れた不明スキルの持ち主が暴れだしたらしいぞ」


「ああ、聞いたことがある。不明スキルの持ち主が集まって、山賊をやってるとか」


「おおくわばらくわばら。早く退治されて欲しいもんだ……」


 そこで、立ち止まっていた俺の背中にフォークが当たる。


「いてっ!」


「立ち止まるな! 出ていけ! いいか、お前、生き残ったからって、山賊に加わろうなんて考えるなよ!? 人に迷惑をかけるな!」


 村人たちが、まるで仇に接するような事を言う。

 こいつら……俺が不明スキルの持ち主だと分かった瞬間、こんな態度になりやがって。


「おら、出ていけ!」


「そら、そら! 突き刺すぞ!」


「いてえって! 刺さってる!」


 俺が抗議すると、奴らはなんとも醜い笑みを浮かべた。


「そいつは悪かったな! だけど、真っ当なスキル持ちの俺たちに手出しをするんじゃないぞ!」


「お前は危険な不明スキル持ちなんだ。人様に迷惑を掛けないように、普通の人に被害が出ないように、ひっそり死んでくれ」


 なんという身勝手か。

 俺の腹がムカムカした。


 じろりとそいつらの一人を睨む。

 俺の視線に魔法の力でもあれば、そいつの顔を焼いていた……。


 と思った時だ。

 俺が見ていたそいつの顔面に、黒い穴が空いた。


「あ……? あぎゃああああああ! いてえ! いてえ!」


「な、なんだ!? まさかこいつ!」


「スキルを使いやがった! この化け物! 化け物め!」


 くっそ!

 こいつら、てめえが殴られないと思って俺をいたぶってたくせに!

 だが、俺にも何が起こったのかは分からない。


 ムカムカする腹を抱えつつ、俺は村の外に飛び出したのだった。

 あばよ、くそったれな村。

 いつか、焼き尽くしてやる!



─────────

カクコン用新作となります!

ダークファンタジーな世界で、ビームというスキルを得た男が世界を変える物語。

まったりのんびりお付き合い願えますと幸いですよ!


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