第3話 さあ、計画を立てようか
月100万円で秘密基地をレンタルする。
恐らく史上初の暴挙に出た風斗とカナリアは一先ずその日は帰宅した。
「そう言えば、ブラスト様のお家ってどこなんですか?」
「シェアハウス。
大家俺だからお前来ても問題ないよ。
形だけ入居者ってことにしちゃうから。」
そう言って風斗は彼が顔も知らない親から相続した『シェアハウス そよかぜ』に入る。
「おじゃましまーす…。」
「ただいまー。」
「お帰り大家さん。あれ?その子は?」
中に入ると居間の所にセミロングの茶髪の大学生ぐらいの少女がいた。
「従妹。今日から管理人室に住むからよろしく。」
「そうなんですか!
私、影村真矢っていいます。よろしくね?」
「は、はい。カナリアっていいます…。よろしく、です。」
「ちなみに入居者この人だけだから。」
「少な!それシェアハウスって言うんですか?」
「まあ一応。ほら、部屋こっち。」
風斗はカナリアを部屋に案内する。
右手にベッド、左手に小さな本棚の付いた机に椅子に小さな冷蔵庫があった。
クローゼットはウォークインになっている。
「さっぱりしたお部屋ですね。」
「男の一人暮らしなんてこんなもんだよ。
ベッドは、お前小さいし一個でいいだろ?」
「ええ!?わ、私女の子ですよ!?」
「就職できる年齢だし問題ないだろ合意なら。」
「私たち未婚の紳士淑女ですよ!?」
「大丈夫だよ。鳥の雌襲うほど女に困ってない。」
「鳥の雌って言い方!
まあ鳥の雌には違いありませんけど!」
そんなコントが少々あったが、ひとまず落ち着いて俺はベッドに、カナリアは椅子に座って向かい合う。
「さて、めでたく悪党になったわけだが、これからどうしようか?」
少なくとも怪人は造れるようになりたい。
そうすれば風斗は戦闘をしなくてもいいからだ。
(俺はただ如何にもラスボスなオーラ振りまきながら機械のボタンポチポチするだけでオッケー。素材は金だけ渡してカナリアに集めさせればいい。
完璧なプランだ。)
「そうですね…まず手に入れた基地を充実させましょう!」
「例えば?」
「絨毯とブラスト様の玉座とかで!」
「そんなもんもっと余裕出来てからでいい。
まずは怪人造る機械なりその素材をしまっとく業務用冷蔵庫なりだろ?」
「そ、そうでした!私としたことが…」
「あとは薬とか跳ねると嫌だし防護服とガスマスクかな?」
段々魔導騎士改め暗黒騎士の癖に科学っぽくなってきたがまあいい。
効率イズベスト。まずは地盤を固めなければ。
「あと怪人造る機械とは言ったけど売ってるもんなの?
『アトリエテンペスト』の阿保どもはスケブとか人形に絵の具かけて造ってたよね?」
「あれはアイツらが独自に造った魔道具で、
ブラスト様が想像してるようなのとは違いますね。」
「じゃあ俺が想像してたのは?」
「天界ウェブの闇通販とかでテロリストども相手に商売してる連中が売ってるやつですね。」
「天界にもテロリストっているんだ…って確か『アトリエテンペスト』とかそうなんだっけ?」
「はい。自分たちでは『芸術家集団』と言ってはばかりませんけど。
迷惑度で言えばブッチギリでナンバーワンですね。
他にも『マッスルキングダム』とか『終末の幻樂団』とか色々いますね。」
どうやら天界も思ったより平和じゃないらしい。
だとすればそんなテロリスト相手に商売してる奴らはそれなりに儲かってるし、信用も有る筈だ。
「その中で機械で怪人造ってるのは?」
「今あげた超有名どこ以外はだいたい機械ですよ?」
「なら早速注文だ。基地に搬入しよう。
そっちは天界人のお前に任せる。俺は業務用冷蔵庫を探す。」
「了解です!」
1週間後、街中にて
「グランドストライク!」
アニマグランドが必殺技を地面に叩き込み、地震を起こしてキャンバス達と、犬のパッチワークのぬいぐるみをデカくしたような怪人の動きを封じる。
「リキッド!シャイン!」
「リキッドニードル!」
「シャインクラスタ!」
グランドの肩を蹴って飛び上がったリキッドは無数のドリルの様に回転する水を纏わせた簪を、シャインは杖から無数の光弾を放ち、怪人達を全滅させた。
「うぅー!また負けたなのー!」
悔しそうに『アトリエテンペスト』第二の幹部『ネイビー』はその一見幼稚園児ぐらいの大きさの身体を目一杯使って地団駄を踏んだ。
「楽勝!」
「後はあなたを封印するだけ!」
「えーい!ブタ箱なんかに放り込まれないの!」
ネイビーは飛んで来た3人に絵筆型の槍を構えて向かっていく、が、背後からの異様な気配に気付き止まった。
「あ、あれは…」
逆光で姿は暗く見えたが、シルエットは間違いなくアニマブラストだった。
安堵する3人。彼が来てくれれば間違いなく勝てる。
「ブラストスラッシュ!」
いつもと違う暗い緑色の、一切周囲の被害を顧みない一撃が4人をまとめて吹き飛ばした。
「きゃあああああ!」
「っ!?……!?」
「な、なんてやつなの…」
「痛たた、酷いじゃんパイセン!
味方ごと諸共って!」
「味方?」
黒い鎧を纏ったブラストはニィ!と不気味なほどほおを釣り上げた笑みを浮かべ
「見えるか?今の俺が味方に、
神サマの力を使ってる様に……」
黒く染まった鎧や聖剣からは無理矢理力を使ってるせいか、バチバチと赤黒く乾いた血の様なエネルギーが過剰放電している。
「まさか…そんな……ブラストさんなんで!?」
「シャイン、簡単なことだよ。
正義の味方なんてやるだけ疲れて報われない!
そんなボランティア、やってらんねえって話さ!」
ガクリと膝をつくシャイン。
それを見てまるで勝手に期待して幻滅しやがって、とでも言いたげに鼻を鳴らすブラスト。
「ブラスト殿…私はあなたを先輩戦士として尊敬してました。
口ではうんざりしながらも私達を気にかけてくれたあなたを善人だと思ってたのに!」
「…俺も出来るなら可愛い後輩を斬りたくはない。今日は街にも人にも正義の味方にも他の悪党何もしないでやるから尻尾巻いて帰れよ。」
聖剣を腰の鞘に収めて再び不敵に笑う。
「この命を…いや、暗雲運ぶ墓場の風、暗黒騎士カオスブラストから、ね。」
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